読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日記

ふしぎなキリスト教  15 奇蹟と科学は矛盾しない

「H 世界はGodが創造したあと、規則正しく自然法則に従って働いている。誰も、自然法則を一ミリでも動かすことは出来ない。その意味で、世界はすみずみまで合理的である。でも必要があれば、例えば預言者が預言者であることを人々に示す必要があれば、Godは…

ふしぎなキリスト教  14 預言者とは何者か

「O ですから簡単に言えば、ニセ預言者というのが横行しうるわけですし、実際に横行していたでしょう。(略)ですから、預言者はどうやって己の真正性を証明したのか。あるいはどうやってその預言者が本物であるということを人々は知ることが出来たのか。(…

ふしぎなキリスト教  13 権力との独特の距離感

「O 先ほど整理して下さったように、仏教も儒教もそしてユダヤ教も、多神教の克服という点では共通しています。多神教の克服というのは、ヴェーバー風に言えば「Entzauberungエントツァンベルング(脱呪術化、呪術からの解放)」ということになるでしょうか…

ふしぎなキリスト教  12 神の姿かたちは人間に似ているか

「H まず、ヤハウェに姿かたちがあるかどうか。 初めは、形がなかったと思う。それは、火山をイメージした戦争神だったから。(略) O 士師というのはわかりやすく言うと何ですか? H 英語で言うと「judge」で、裁判官のこと。でもその役目は、カリスマ的・…

ふしぎなキリスト教  11 なぜ偶像を崇拝してはいけないのか

「O たとえば「ヤハウェ」という名も_それが意味するものについては多様な解釈がありますが_、一つの有力な説によれば、「存在するもの」というような意味になるわけです。 要するに、神とは、存在の中の存在というか、最も強烈に存在するもの、普通の存在…

ふしぎなキリスト教  10 ヨブの運命_信仰とは何か

「H 話を戻しましょう。理不尽な不幸に襲われたときに読む書物があって、「ヨブ記」です。「ヨブ記は、さっきの「ヨナ書」と同じく旧約聖書の「諸書」のひとつです。(略) ヨブにとって一番辛いのは、神が黙っていることです。ヨブが神に語り掛けても、答え…

ふしぎなキリスト教  9 全知全能の神がつくった世界に、なぜ悪があるのか

「O しかし、そういう不可解な神様を受け入れるに至るまでの過程や社会的メカニズムがあったはずです。あるいは、そのような神の存在を前提にすることが、その人びとの生き方の中でいかに説得力があると実感される、客観的な原因があったはずで、それを知り…

ふしぎなキリスト教  8 神に選ばれるということ

「H というわけで、ヨナは、言われた通りに予言をした。そうしたら、ニネベは悔い改めたんです。悔い改めたから、ヤハウェはニネベを破滅させないことにした。そうしたらヨナは怒った。「えっ、私は何のために来たの?」。 ヨナはニネベが破壊されるのを楽し…

ふしぎなキリスト教  7 原罪とは何か

「H ユダヤ教には、原罪という考え方はない。」 「H 原罪については、キリスト教を扱う第2部で述べますが、少し先回りして話した方が良さそうですね。 まず、罪について。そして、原罪について説明します。それから、なぜこんなにありがたくない神ヤハウェを…

ふしぎなキリスト教  5 なぜ、安全を保障してくれない神を信じ続けるのか

「O 先ほど橋爪さんがおっしゃっていた非常に重要なポイントで、聞いていてなるほどと思ったのは、要は神との関係は安全保障である、ということです。もちろん宗教家はこの教えは優れているからとか、宗教に内在的な論理をつけるでしょうけれども、古代世界…

ふしぎなキリスト教  4 ユダヤ民族の受難

「H じゃあ、次のポイントは、王が登場すること。(略) サムエルになぜそんな権限があるかというと、ヤハウェの声を聴いたから。Godがいると、Godが選んだからという理由で王制をつくりやすい。こうして、ヤハウェ信仰と王制が結びついた。」 〇このヤハウ…

ふしぎなキリスト教  3 ユダヤ教はいかにして成立したか

「O それは明らかにフィクションと言いますか神話的です。しかし、旧約聖書は、そういうところからだんだん、実際にあった話がそれなりに伝承されて文字になったものだろうと解釈できる部分へと、つまり本当の歴史へと変わって行きます。 旧約聖書の記述は、…

ふしぎなキリスト教  2 一神教のGodと多神教の神様

「O 考えてみれば、神さまはたくさんいる方が普通ですよね。神様をたくさん持つ共同体の方が、歴史的には、圧倒的に多かった。結果的には一神教の伝統を持つ社会が地球を席捲したので、神様は一人というのが一般的になりましたけど、もとを正せば、神様をた…

ふしぎなキリスト教  1 ユダヤ教とキリスト教はどこが違うか

〇 大澤氏と橋爪氏の対談になっているので、大澤氏の発言をO、橋爪氏の発言をHと記載します。発言の一部だけを切り取ってメモするので、本来は「(略)〇〇〇〇(略)」とすべきですが、その一部だけを記載しています。 「O イエスが登場した時、彼はキリス…

ふしぎなキリスト教  まえがき

〇橋爪大三郎×大澤真幸著 「ふしぎなキリスト教」を読みました。 この本の紹介を見たのは、もうずいぶん前です。読んでみたいなぁと思ったのは、この著者大澤真幸氏に興味を持ったからです。 講談社のPR雑誌「本」の中に「社会性の起源」という文章があり、…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語 エピローグ

「あのピザ・レストランで過ごした午後から、ほぼ十年がたった。シーラは今、彼女を私のクラスに迎えた時の私より年上になっている。彼女は今でもファースト・フード業界で働いているが、もうハンバーガーの売り子ではない。思いがけず目先の聞くビジネスの…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「「うん。お父さんのところに連れてって」シーラは私の方をちらりと見た。「ここ一時間ほど、目を閉じっぱなしだったけど、ずっと眠っていたわけじゃないんだ。考えていたの。あたしたちが話したことについて、何度も何度も考えていたんだ。それで家に帰り…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「「あたしがいやなの」シーラは言い返した。「泣きたくないんだよ。一度泣き始めたら、やめられなくなるんだもの」 「ずっとそれを恐れていたのね?」 シーラは頷いた。涙がますます溢れてきたが、彼女はまだそれを止めようとしていた。「ものすっごく腹が…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「「シーラ、電話を切っちゃだめよ」 「切らないけど」向こうからすごく小さな声が聞こえて来た。 「あまりうまく行かなかったのね?」 「うん」 「何があったの?私に話してくれる?」 「ここでは話せないよ。みんなにきこえるもの」(略) 「シーラ、わた…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「親愛なるお母さん、 あの頃、私は本当に困った子でした。だからお母さんもあんなことをせざるを得なかったのでしょう。私にもわかる気がします。だって、お母さんとしては、ああするしか他に方法がなかったんでしょうから。 でも、わたし、今はずっといい…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「正直なところ、私にはわからなかった。だからといって、シーラが噓をついていると思ったわけではない。私の知っているかぎりのシーラがやりそうなたくらみを考えても、シーラは今までずっと私には本当のことを言ってきていた。 今になって彼女の潔白を疑う…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「「いつお父さんが仮釈放になるかわかったよ。十月二十八日だって」シーラが言った。 「あなた、どうするつもり?」 シーラは肩をすくめた。(略) 「お父さんはどこに住むの?仕事はあるのかしら?」 「ブロードヴェーへ戻るつもりだと思うよ。ブロードヴ…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「シーラは珍しく心を開いてよくしゃべった。あまりにも長い時間をたった一人で過ごした結果こうなったのだろう。一人ぼっちで寂しかったから、見慣れた私の顔に余計に反応したのだ。 鬱病もその一因だった。私が全体として受けたその午後のシーラの印象とし…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「親愛なるお母さん、 あなたが見えればいいのですが。あなたがどんな顔をしているかわかっていればいいのですが。あなたの写真を手に入れようといろいろやってみましたが、お父さんは一枚も持っていないし、他の誰も持っていないようです。あなたのことを知…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「すてきな休暇がいつもそうであるように、この休暇も終りにはくたくたに疲れ切り、帰って来たときにはほとんどまっすぐにものが見えないほどだった。よろよろと飛行機から降り、タクシーをつかまえて街に向かうと、よろけながら自分のアパートメントの建物…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「シーラと父親は姿を消してしまった。信じられなかった。続く何週間かのあいだ、私はショック、怒り、幻滅、後悔、悲しみ、とありとあらゆる感情を味わった。なかでも悲しみが一番大きかった。シーラとの関係を修復するのにたっぷり三カ月かかったというの…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「結局、アレホ誘拐騒ぎは、ドクター・ローゼンタールとアレホの両親の気持ちから、シーラはサマー・プログラムの仕事には戻ってこない方がいいだろうということで一件落着となった。その気持ちは十分理解できたので、私たちもこの決定に同意した。(略) そ…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「闇の中を走りながら、私はあれこれ考えていた。そのとき、ふと、ここ数日色々大変だったけれど、いや大変だったからこそ、私とシーラとの関係が再会以来もっともいい状態になっていることに気づいた。今日はいろいろな意味で辛い日だったが、気持ちの上で…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「その朝のシーラには珍しく無防備なところがあった。おそらくアレホと過ごした苦しい経験のせいで、まだ疲れていてお腹も空いていたせいなのだろうが。いずれにせよ、シーラは自分が困っていることを隠そうともしなかった。 シーラが身体を洗いに行ったとき…

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「待っていても何にもならなかった。そこでついに私たちはあきらめて、この事件は警察に任せることにして家に帰った。家に帰っても、私は眠れなかった。(略) 私が六歳のシーラに対して行ったことはあれで十分だった、私はシーラの人生を変えたのだと考える…