読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

武士道

武士道

「第十七章 武士道の将来 ヨーロッパの騎士道と日本の武士道との間におけるごとく適切なる歴史的比較をなしうるものは稀である。しかしてもし歴史が繰り返すものとすれば、後者の運命は必ずや前者の遭遇したるところを繰り返すであろう。(略) ヨーロッパの…

武士道 

「第十六章 武士道はなお生くるか 我が国において駸々として進みつつある西洋文明は、すでに古来の訓練のあらゆる痕跡を拭い去ったであろうか。 一国民の魂がかくのごとく早く死滅しうるものとせば、それは悲しむべきことである。外来の影響にかくもたやすく…

武士道

〇 途中になっていた新渡戸稲造著「武士道」のメモを続けます。 「第十五章 武士道の感化 武士道の徳は我が国民生活の一般的水準より遥かに高きものであるが、吾人はその山脈中さらに頭角を抜いて顕著なる数峯だけを考察したにすぎない。太陽の昇る時まず最…

武士道

「第十四章 婦人の教育および地位 人類の一半を成す女性は往々矛盾の典型と呼ばれる。けだし女性の心の直感的な働きは男性の「算数的な悟性」の理解を超ゆるが故である。「神秘的」もしくは「不可知的」を意味する感じの「妙」は、「若い」という意味の「少…

武士道

「第十三章 刀・武士の魂 武士道は刀をその力と勇気の表徴となした。マホメットが「剣は天国と地獄との鍵である」と宣言した時、彼は日本人の感情を反響したに過ぎない。武士の少年は幼年の時からこれを弄んでいた玩具の小刀の代りに真物の刀を腰に挿すこと…

武士道

「第十二章 自殺および復仇の制度 この二つの制度(前者は腹切、後者は敵討として知られている)については、多くの外国著者が多少詳細に論じている。 まず自殺について述べるが、私は私の考察をば切腹もしくは割腹、俗にはらきりとして知られているものに限…

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「第十一章 克己 一方において勇の鍛錬は呟かずして忍耐することを銘記せしめ、他方において礼の教訓は我々自身の悲哀もしくは苦痛を露すことにより他人の快楽もしくは安静を害せざるよう要求する。この両者が相合してストイック的心性を産み、遂に外見的ス…

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「第十章 武士の教育および訓練 武士の教育において守るべき第一の点は品性を建つるにあり、思慮、知識、弁論等知的才能は重んぜられなかった。美的のたしなみが武士の教育上重要なる役割を占めたことは、前に述べた。それは教養ある人に不可欠ではあったが…

武士道

「第九章 忠義 封建道徳中他の諸徳は他の倫理体系もしくは他の階級の人々と共通するが、この徳―目上の者に対する服従および忠誠―は截然としてその特色をなしている。人格的忠誠はあらゆる種類および境遇の人々の間に存在する道徳的結びつきであることを、私…

武士道

「第八章 名誉 名誉の感覚は人格の尊厳ならびに価値の明白なる自覚を含む。したがってかの生まれながらにして自己の身分に伴う義務と特権とを重んずるを知り、かつその教育を受けたる武士を、特色づけずしては措かなかった。(略) これら三つの語はそれぞれ…

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「第七章 誠 信実と誠実となくしては、礼儀は茶番であり芝居である。伊達政宗曰く、「礼に過ぐれば諂いとなる」と。「心だに誠の道にかないなば、祈らずとても神や守らん」と誡めし昔の歌人は、ポロニウスを凌駕する。孔子は「中庸」において誠を崇び、これ…

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「第六章 礼 作法の慇懃鄭重は日本人の著しき特性として、外人観光者の注意を惹くところである。もし単に良き趣味を害うことを怖れてなされるに過ぎざる時は、礼儀は貧弱なる徳である。真の礼はこれに反し、他人の感情に対する同情的思いやりの外に現れたる…

武士道

「第五章 仁・惻隠の心 愛、寛容、愛情、同情、憐憫は古来最高の徳として、すなわち人の霊魂の属性中最も高きものとして認められた。それは二様の意味において王者の徳と考えられた。すなわち高貴なる精神に伴う多くの属性中王位を占むるものとして王者的で…

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「第四章 勇・敢為堅忍の精神 勇気は、義の為に行われるのでなければ、徳の中に数えられるにほとんど値しない。孔子は「論語」において、その常用の論法に従い消極的に勇の定義を下して、「義を見てなさざるは勇なきなり」と説いた。この格言を積極的に言い…

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「第三章 義 義は武士の掟中最も厳格なる教訓である。武士にとりて卑劣なる行動、曲りたる振る舞いほど忌むべきものはない。義の観念は誤謬であるかも知れない―狭隘であるかも知れない。ある著名の武士[林子平]はこれを定義して決断力となした、曰く、「義…

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「第二章 武士道の淵源 まず仏教から始めよう。運命に任すという平静なる感覚、不可避に対する静かなる服従、災禍に直面してのストイック的なる沈着、生を賤しみ死を親しむ心、仏教は武士道に対してこれらを寄与した。 ある剣道の達人[柳生但馬の守]がその…

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新渡戸稲造著 「武士道」を読みました。 矢内原忠雄訳の岩波文庫です。 サブタイトルとして、日本の魂 ―日本思想の解明― とあります。 「過去を敬うことならびに 武士の徳行を慕うことを 私に教えたる 我が愛する叔父 太田時敏に この小著を ささぐ」 となっ…