読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

黄梁の夢

「鈴蘭の咲く頃に」「空の青、風の呼ぶ声」を読み終わりました♪

鈴蘭の君が清苑公子の母親。これは確かに読んだ記憶があります。

でも、この鈴蘭が、それほどの策謀家だったという所は、

すっかり記憶から抜けていて、あらためてびっくりしました。

第六妾妃の化粧品に劇薬を混ぜ、自殺に追いやったのが、この鈴蘭だった。

靜蘭の母親がこの鈴蘭でなければ、きっと靜蘭の運命も違ったものに

なっていたはず、と何度も言われているように、母親との間に親密な心の通い合い

を持てなかったことで、氷のような心になってしまった、

ということはあるんだろう、と思います。

また、靜蘭の父親である戩華の人柄が具体的に描かれていたり、

靜蘭や燕青の少年時代のエピソードや二人の繫がりが描かれていて、

外伝とは言え、これはこの物語に外せないものになっていると

思います。「空の青、風の呼び声」は読み応えもあり、とても

面白かったです。

「鈴蘭…」の中で、第一公子である兄と自分が比べられ、

仲が良かった兄弟の溝が深まり、兄がまるで変わってしまった…と

思い返すシーン。

「兄も清苑もそれぞれ潰れまいと必死で最善を尽くし、

その結果がこうなっただけの話だ。何が悪いという問題でもなかった。」

こういうことは、本当にどうしようもなくあると思う。

ここでは、朝廷内の特別な身分の人々の話になっているけれど、

一般の庶民の間でも、この類のことは、どうしようもなく、

あるような気がする。

「何が悪いという問題でもなかった。」

こう捉える著者の見方が好きです。

「何より、もはや愛するフリさえやめた自分に比べれば。まだ頑張ろう

としている母の方がよほど上等だった。だから清苑はできるだけ母を」

守ろうとは思っている。」

この考え方も好きです。

偽善とか、もともと愛がない母親のくせに、とか言ってみても

しょうがないわけで、「変えられないもの」=(無邪気な愛を持てない

体質の二人)を引き受けて、頑張るという姿勢が好きなんだと思います。

そして、藍家のぼっちゃん、楸瑛と靜蘭の少年期の接触も、

読んでいて、楽しかった。

びっくりしたのは、戩華の死因が靜蘭が劉輝の為に買おうとした、

お手玉に込められていた呪いによるものだった、ということ。

戩華は、劉輝を池から救い上げ、次に靜蘭のお手玉を取り替えることで、

靜蘭の命も救った。誰も愛さない血も涙もない王というイメージが、

少し変わりました。

しかも、戩華は、ここで、邵可に劉輝と靜蘭の面倒を見てもらおうと

考えているんですね~

偶然、劉輝や靜蘭の面倒をみるようになったわけではない、とわかって、

細部まで神経が行き届いている繊細な絵を見ているような、

気持ちになりました。

「空の青…」の方も、短命二郎が実は官吏だったり、

知多星の正体がわかったり、南老師や銀次郎がいたり、

次々と心惹かれる展開です。

「まがいものの清苑とは違う、どぶの底でも輝くほんものの高貴。」

あぁ、好きだなぁと思います。

「あなたが自分より大事に思う人がいるなら、それだけで生きる理由になる。」

こういう言葉があるので、読んでいて嬉しくなるのです。

「お前が俺を嫌いでもいいよ。俺超心広いから全然気にしねーし。」

「このどぶの底こそが、本当に清苑にふさわしい場所だったのだ。」

「燕青。私が生きてもいいと思えるには、それだけの罰が必要なのです。」

例え、誰かを守る為にしたことでも、人殺しは人殺し。

秘密にしていても、本人はその罪を知ってるわけで、

心が蝕まれ続けるのではないかと、思います。

それでも、じゃあ死ねば良いのか、と言えば、それも違うと思う。

靜蘭も燕青も知多星も、罪を引き受けながら頑張る、という物語で、

いいなぁと思います。