この本を読みながら、ずっと感じていたのは、
催眠誘導なるものの胡散臭さです…。本当にこんなことがありえるのかなぁと。
でも、サブリミナル効果については、あるのかも…と思いました。
そして読み終わった後に、少なからず違和感を感じたのは、
そのサブリミナルで万引きが減らせるのなら、私が「本屋の店主」でも、
使うかもしれないなぁということ。
更には、父親を轢殺され遺体遺棄された守が、
今まで好感を持っていた男に殺意を抱いたり、復習心を持つ場面。
いえ。この宮部みゆきさんの正義感がおかしいと言いたい訳ではありません。
そうではなく、この私、自分自身の正義感がそれほどではない、
ということをしっかり自覚させられた、ということに、
正直、びっくりしたのです。
私は自分がわりと正義感が強い方だと思ってました。
現実にそう行動できるかどうかについてはともかく、
机上の空論的な場所では、平気で正義の味方的なことを言うタイプの
人間だと思ってました。
でも、この本を読んでいると、その辺りがすごくグラグラしてくるのを
感じて、むしろ宮部さんの基準の厳しさに違和感を感じる自分が居ることに
驚いたのです。
老人は、「坊や」に自分と坊やには共通なものがある、と何度も言います。
大切な人が殺されたり騙されたりして、そのために苦しんだ被害者には、
加害者を裁き罰する権利がある、という老人。
その老人を狂っている!と非難していた守も、自分が被害者になると、
老人と同じ復習心を持ち、殺意を行動に移そうとする。
結局踏みとどまるわけですが、何故そこで踏みとどまることが出来たのか…。
そこの所をもう一度読み直して、しっかり考えてみたいと思いました。