しばらく孫の世話を頼まれ、子供の家に行っていました。
もともと子供は苦手なので、孫とはいえ緊張して出かけたのですが、
世代間ギャップの大きさに唖然とするばかりでした。
小学生の男の子二人相手に、全く太刀打ち出来ませんでした。
最初の頃は、テレビゲーム漬けの時間を少しでも人間付き合いの時間に
したい、極力コミュニケーションをとって、カードゲームや
ボードゲームをしたり、一緒に色々出来たら…と思い、
自分の時間はないものと覚悟していました。
そんなわけで、読みかけの本も持たずに出かけたのですが、
ただただ子供に合わせて過ごす時間の辛さに耐え切れず、
そして4日目以降は、もう一刻も早くこの苦しい時間が終わって欲しいと
念じつつ、子供たちがゲームべったりになってる姿を見ながら、
この海辺のカフカの世界に逃げ込み、現実逃避して過ごしました。
そしてしみじみ思いました。この村上春樹の本は
現実逃避には最適だと。
ジョニー・ウォーカーさんの猫殺しを止めるためにナイフを突き刺した
ナカタさんのシーンで、「これは戦争だ。目をつぶって辛いことを見ない
ようにしても、少しも問題は解決しない。むしろ悪くなる。」的な言葉が
とても印象的でした。
その他にも印象深い言葉がたくさんあり、物語の展開は面白く、
様々な深い洞察があり、すごいなぁと思うのですが、
その一方で「とても面白い遊園地で遊ばせて貰ってるような気持ち」に
なるのは、なぜなんだろう、と感じました。
あえてそこを狙っているのでしょうか。
なにか、この村上春樹という人の言葉がこちらに迫ってくるという感じがなくて、
ただいい感じの要素をいっぱいに散りばめた空間で楽しませてもらってる、
という気持ちになるのです。
そのことが現実逃避したくてたまらなかった私には、とても助かりましたが、
何かがごまかされているような、そんな気持ちにもなりました。
明日からは、また舞城王太郎に戻りたいと思います。