網野義彦著「日本中世の民衆像」を読み始めました。
これも、随分前に購入し、いつか読もうと思いながら読まずにいた本です。
○日本人の歴史を考える前提となる二つの観点
・日本人が古くから一つの人種、一つの言語の単一民族
それを中心として展開
○その観点は支配者からの観点であり、庶民からのものとは言いがたいので、
中世の平民と職人の生活に即して、この問題を考える。
○中世とは平安時代末から戦国時代まで
この時期は南北朝内乱を境に大きく分けられる
南北朝より前=中世前期
○中世後期、すなわち室町・戦国時代の問題はおおよそ江戸時代から
明治以後のわれわれの常識で理解できる
○中世前期、鎌倉時代以前の問題は、古代につながっていく面があり、
今のわれわれの常識では理解しがたいものがある。
○言葉の意味が南北朝前後で大きく変化
自然:戦国時代には、「もしも、万一」
自由:鎌倉・南北朝期には、秩序にさからい、乱そうとする行為を意味した
不自由:戦国期には、プラス評価の意味
無縁・公界・楽:西欧の「フライハイト」にあたる意味
○ゲザイ(下在・下財・下才)の「下」には賤視の意味がある。
しかし中世前期には、「外財」「外才」「外材」という表現があり、
「外」に賤視の意味はほとんどなく、非農業的な生業の人々や
職人、芸能の働きを意味する言葉として使われていた。
仏師が「外才の者」と言われている書物もある。
○非人、中世前期は「清目」を職能とする職人として位置づけられていた。
「清目」にも賤視の意味はなかった。
中世後期には、被差別身分の呼称の一つとなる。
○南北朝という時期は、たんに中世社会の転換期であるだけでなく、
日本の社会構造、民族的な体質にかかわる大きな転換期
○中世社会の被支配者の身分 自由民と不自由民に大きく分けられる。
自由民:平民と職人
不自由民:下人・所従
○中世社会論を全面的に展開するのではなく、日本の社会の
民族的な体質、文化的な特質、庶民の生活にしぼり、問題を考える。