読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中世の民衆像

○おわりに

 ・興福寺の非人を統轄する「戸上(トガメ)、膳手(カサイデ)」という公人は
  強訴や祭の際に真っ赤な狩衣をきる

 ・河原者が「赤」という名前を持っていた

 ・1496年、美濃の戦国大名斉藤妙純を自害させた近江の馬借は柿色の衣を
  つけて一揆を起こした(柿帷衆)

 ・峰相記の悪党も柿帷、山伏も柿色の衣、江戸時代の被差別部落民の渋染一揆

 ・未開発の山は黒山といわれた

 ・中世前期 祭や強訴の時に飛礫がとんだ(呪術的な魔除け、破魔の意味)

 ・飛礫と菖蒲が結びつき魔除けの作用を持つと考えられた

 ・南北朝の動乱ののち、文字がより深く社会に浸透するようになり、
  呪術性が消えていく

 ・感性に変わって理性が優位をしめ、その反面私有が浸透

 ・大規模な軍勢の移動と人間の移住を呼び起こしたモンゴル襲来、南北朝の動乱
  により、次第に呪術性が消え、感性よりも理性が優位になり、
  私有が浸透するようになる転機となった

 ・日本の民族は天皇による統合などではなく、民衆自身の多様な生活
  の営みの中から形成されてきた

 ・失われたかにみえる人と人のつながりを回復するため、自分自身の中に
  世界の諸民族の民衆の心を感じうるような新しいつながりを見つけ出す
  という課題

 ・道を模索する者同士の間には、みせかけでないつながりが必ず
  出来てくることを確信する


○あとがき

 ・「われわれをとりまく状況は、天皇をふたたび日本民族の統合の中心に
  すえるべく、急速に動き始めている。それは、歴史を学び、その真実を
  極めようとする者に対し、これがもとより歴史の事実に即したものでは
  ないことを明らかにするとともに、民衆自身の生活そのものの多様な営み
  のなかから、民族がそれとして形成されてくる道筋を具体的に解明することを
  要求している、と私は考える。」

 
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あとがきに書かれていた、「ふたたび天皇日本民族の統合の中心にすえようとする
勢力」の動きについては、既にこの頃からあったのだと知った。

天皇を担いで太平洋戦争をし、靖国神社にその戦没者を祭っているのだから、
その精神は脈々と受け継がれているのだろうとは思う。

以前、ドラマ「天皇の料理番」の中で小林薫が演じた料理長が「日本人にとっての
天皇」を説明する際、「味噌のようなもの」と言った言葉が印象的だった。

味噌はそれがなければいられないほどに必要不可欠なもの。
その感覚はとてもわかるし、確かに私自身の中にもその感覚がある。

でも、それはあくまでも日本民族を幸せに導くものであるはず。
味噌の為に、国民こぞって命を投げ出し、互いに獣のようになって殺し合う
ようになるのなら…

更には一部の同胞を虐げて踏みにじり、「国体」を
護らなければならないのなら…

そんなことをしてまで、味噌を守る必要はないと大声で言いたい。

あくまでも、大事なのは日本の一般民衆であって、天皇ではない。

この網野義彦さんは、「天皇日本民族を統合したのではない。」ということを
客観的な事実とする為に、この研究をしていたのだと知った。

「世界史の法則」という言葉があったけれど、日本も世界の一部であるのなら、
その世界史の法則は日本の歴史にも及ぶと考えるのがより普遍性のある
考え方ではないかと思う。

そして、その普遍性を大切にする時、人はみせかけではないつながりを持つことが
出来るようになる、ということなんだろうと思った。