〇 やはり、一般的にも難解だったのか…と少しホッとしました。
「意志とは、それによって個人の性格や個性が生まれてくるものだが、そのことを自由な自己決定の肯定という面だけで議論するならば非常に極端な独我論に陥る可能性がある。(略)
ところが、アインシュタインやブランクのような現代科学の刷新者の場合、自分たちの理論的な基礎付けが、場合によってはこうした外界の検証に委ねられる性格を超えてしまう危険性を意識していた。ことによれば、世界は神のさいころ遊びの結果にすぎないかもしれないとか、「外界」は我々の内なる世界をたんに外に出しただけかもしれないという不安感まで持ったのである。」
〇この「解説」では、これは危機意識によるものとあります。確かにそうなのでしょうけど、私がここを読んだ時に感じたのは、物理学者のような科学者も、
「この世界がどうあるべきか」という問題を考えずにいられない所に突き当たっているわけで、その意味では、今、アーレントが問題にしているのと同じレベルにある、
つまり、この問題は、思索者だけの問題ではなく、人間全体の問題なのだ、と言いたいのだと思いました。
「ここで重要なのは、古い秩序からの解放と新しい自由との間に断絶があるということである。新たな自由は「時代の新しい秩序」を形成することになる。
古いものから解放されたからといって新しいものの始まりと直結するわけではないのだが、こうした伝説においては指導者がこの歴史におけるギャップを受容して、新たなものの創設へと突き進まざるを得なくなる。革命という言葉は、元来、天文学上の意味を持ったものであって、天体の観測的法則的回転運動を示すものにすぎなかった。」
〇ここは、わかるようでわからなかったので、この解説を読んで、あぁそうなのか、
と思いました。
「歴史におけるギャップを受容して、(略)突き進まざるを得なくなる」というところを私は理解していませんでした。
「建国は、人間の世界で、過去のことを物語り記憶し保存するという過程を通じて、古いものを再設立するという形式をとるのである。(略)こうした考え方はマルクスにおいてさえ見られるもので、「原始共産制」の階級も戦争もない「自由の王国」という観念が、歴史の進歩という観念と一緒になって使われたのである。」
〇 こうすっきり言ってもらうと、よくわかります。
〇全体の感想。
そうして良かったと思います。
多分、3割も理解できていないと思いますが、この本の中の言葉のかけらから、
自分なりにあれこれ考える時を持てたことが良かったと思いますし、
難しいことはわからなくても、考える姿勢というか、生きる姿勢のようなものは、
十分に感じ取ることが出来て、読んでよかったと思っています。
そして、この訳者の佐藤和夫さんを知ることが出来たのも収穫です。
「訳者あとがき」からのメモです。
「世界中がとてつもない規模の方向転換に向かっているように見える。これまでの文化、わけても、政治はすべて信用を失い、いろいろ手を変え品を変えて登場する政治改革と称するものもみな一瞬にして魅力を失い、もううんざりだ、という感覚が蔓延している。近代社会が政治という名の下でつくってきた枠組みそのものが無効になりつつあるのかもしれない。」
「にもかかわらず、私にとって、この翻訳は放棄してしまうことのできないものだった。それどころか、私は翻訳の過程を通じてどれほどアーレントに励まされ、彼女との対話を通じて現代世界について考えたか知れなかった。およし、人間の自由について考え、現代の全体主義への危険を感じる人間ならば、アーレントのこの著作は限りない刺激を与えるものであることを疑わない。」
〇 いつか読んでみたいと思います。今は、ちょっと無理のようです。