読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 下

「この制度では、人々は想像上の財、つまり現在はまだ存在していない財を特別な種類のお金に換えることに同意し、それを「信用(クレジット)」と呼ぶようになった。この信用に基づく経済活動によって、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになった。

信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べ物にならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。」


「信用がそれほど優れたものなら、どうして昔は誰も思いつかなかったのだろうか?もちろん昔の人々も思いつきはした。(略)なぜなら彼らには、将来が現在よりも良くなるとはとうてい信じられなかったからだ。概して昔の人々は自分たちの時代よりも過去の方が良かったと思い、将来は今よりも悪くなるか、せいぜい今と同程度だろうと考えていた。」


「信用が限られていたので、新規事業のための資金を調達するのが難しかった。新規事業がほとんどなかったので、経済は成長しなかった。経済が成長しなかったので、人々は経済とは成長しないものだと思い込み、資本を持っている人々は相手の将来を信頼して信用供与をするのをためらった。こうして、経済は沈滞するという思い込みは現実のものとなった。」


「<拡大するパイ> そこに科学革命がおこり、進歩という考え方が登場した。進歩という考え方は、もし私たちが己の無知を認めて研究に投資すれば、物事が改善しうるという見解の上に成り立っている。 この考え方は間もなく経済にも取り入れられた。」


「1776年、スコットランド生まれの経済学者アダム・スミスが「国富論」(大河内一男監訳、玉野井芳郎・田添京二・大河内暁男訳、中央公論新社、2010年他)を出版した。国富論は、おそらく歴史上最も重要な経済学の声明書と呼んでもいいだろう。第一編第8章でスミスは次のような、当時としては斬新な議論を展開している。


すなわち、地主にせよ、あるいは職工、靴職人にせよ、家族を養うために必要な分を越える利益を得た者は、そのお金を使って前より多くの下働きを使用人や職人を雇い、利益をさらに増やそうとする。

利益が増えるほど、雇える人数も増える。したがって、個人起業家の利益が増すことが、全体の富の増加と繁栄の基本であるということになる。」


〇「国富論」という書名は知っていましたが、そのような考え方は、今回、初めて知りました。いわゆる「資本主義的考え方」については、私のように無知な人もたくさんいるのでは?と思います。


「実際のところスミスはこう述べているのに等しい_強欲は善であり、個人がより裕福になることは当の本人だけでなく、他の全員のためになる。利己主義はすなわち利他主義である、というわけだ。」


「そのためスミスは念仏でも唱えるように、「利益が拡大したら、地主や織屋はさらに働き手を雇う」という原則を繰り返し述べた。

「利益が拡大したらスクルージは金庫にお金を貯めこみ、取り出すのはいくら貯まったのかをを勘定する時だけ」ではいけないのだ。近代資本主義経済で決定的に重要な役割を担ったのは新しく登場した倫理観で、それに従うなら、利益は生産に再投資されるべきなのだ。」


「資本主義は「資本」をたんなる「富」と区別する。」


〇この新しい倫理観は全く知りませんでした。
でも、ここでもやはり、信頼感が問題になります。将来年金がどうなるかわからないのに…と。