読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 下

「<原子の平和(バスク・アトミカ)>  これらの諸帝国の後を受けた独立国家は、戦争には驚くほど無関心だった。(略)

こうした征服劇は、はるか昔から、政治史においては日常茶飯事だった。巨大帝国の多くは、征服によって建設されてきたのであり、大半の支配者も人民も、この状況が変わることはないと考えていた。

だが今日では、ローマやモンゴル、オスマントルコのもののような征服を目的とした軍事遠征は、もはや世界のどこにおいても起こりえない。(略)


戦争はもう、当たり前の出来事ではない。」


〇この人(ハラリ氏)は偉いなぁと思います。戦争の多くは、「征服されるかもしれない…」という恐怖や疑心暗鬼から始まると聞きますし、実際そうだろうな、と思います。

だからこそ、「起こりえない可能性」が若干でも高い時には、「もう起こりえない」とはっきり言うことが必要なのだと思います。
それをこの人はしっかり理解して言っているように見えます。

最初、読んだ時、この人は、若い。そんな楽観的なことを言ってて良いのか?と思いました。でも、まさにその気持ちこそが、戦争を引き起こすのだと思います。100%はない。だから、備えはある程度しておかねばならない。

でも、「起こりえない」とみんなが信じるとき、それは、現実になると思います。
丁度、あの「資本主義の信用」が現実のものになったのと同じように。


「今日の人類は、この弱肉強食の掟を覆している。戦争がないだけでなく、ついに真の平和が実現したのだ。」

「今後あらゆる平和賞を無用にするために、ノーベル平和賞は、原子爆弾を設計したロバート・オッペンハイマーとその同僚たちに贈られるべきだった。核兵器により、超大国間の戦争は集団自殺に等しいものになり、武力による世界征服をもくろむことは不可能になった。」


「カリフォルニアについて考えてみよう。そなわち、IT企業の集中するシリコンヴァレーと、ハリウッドのセルロイドヒルズ(映画の丘)だ。(略)


シリコンヴァレーには、シリコンの鉱脈などない。富はグーグルのエンジニアや、ハリウッドのスクリプト・ドクター、映画監督、特殊効果の技術者らの頭の中にある。(略)


イラククウェート侵攻のように、数は少ないながら今なお世界で発生している国家間の全面的な戦争が、旧来の物質的な富に依存する地域で起こっているのは、けっして偶然ではない。クウェートの首長一族らは国外に逃亡できたが、油田はそのまま放置され、占領された。


戦争は採算が合わなくなる一方で、平和からはこれまでにないほどの利益が挙がるようになった。」


「最後になったが、他に劣らず重要な要因として、グローバルな政治文化に構造的転換が起こったことが挙げられる。歴史上、フン族の首長やヴァイキングの王侯、アステカ帝国の神官をはじめとする多くのエリート層は、戦争を善なるものと肯定的に捉えていた。

一方で、うまく利用すべき必要悪と考える指導者もいた。現代は史上初めて、平和を愛するエリート層が世界を治める時代だ。政治家も、実業家も、知識人も、芸術家も、戦争は悪であり、回避できると心底信じている(初期のキリスト教徒のように、過去にも平和主義者はいたが、そうした人が権力を手にした数少ない事例を見ると、「反対の頬をも差し出す」という、仕返しを禁じる掟は忘れ去られてしまいがちだった)。」


「では、果たして近代は、(略)見境のない殺戮と戦争と迫害の時代なのだろうか?(略)

その答えは、時期によって異なる。過去に対する私たちの見方が、直近の数年間の出来事によっていかに歪められやすいかに気づけば、はっとさせられる。仮に1945年か、62年にこの章が書かれていたら、おそらくはるかに陰気な内容になっていただろう。」