読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

山本七平著 「日本はなぜ敗れるのか_敗因21か条」を読んでいます。

〇横井・小野田両̪氏に関するコメントを求められたことに端を発して、戦時中の記憶をどう扱うかについて、最初に色々説明しています。

山本氏は、問う人とその読者を予想しての答え、それが「戦争の正確な記録」になりうるだろうか、と問題提起します。

その中で、故小松真一氏の「虜人日記」をとりあげ、「現在われわれが読みうる最も正確な記録であろう」と言っています。

少し読み始めましたが、山本氏は、この「慮人日記」の文章と絡めるように、自分自身の同じような体験も並べて記載し、その内容をさらに具体的に説明しています。

今までと同じように、抜き書きは「」で、私自身の感想は〇で記入します。
また、抜き書きの中で、小松氏の「慮人日記」の部分は『』で記入します。


「『  序  昭和二十年九月一日、ネグロス島サンカルロスに投降してPW(捕虜)の生活を始めて以来、経験した敗戦の記憶がぼけないうちに何か書き止めておきたい気持ちをもっていたが、サンカルロス時代は心の落ち着きもなく、給与も殺人的であったので、ものを書いたりする元気はなかった。

レイテの収容所に移されてからは、将校キャンプで話し相手があまりにたくさんあり過ぎて落ち着いた日がなく、書こう書こうと思いながらついに果たさなかった。

幸か不幸かレイテの仲間からただ一人引き抜かれて、ルソン島に連れてこられ、誰一人知った人のいないオードネルの労働キャンプに投げ込まれた。話し相手がないので、毎日の仕事から帰って日が暮れるまでの短い時間を利用して、記憶を呼び起こして書き連ねたものである。』

この序文に、人は何の感動もおぼえないであろう。だが、当時、「書く」ということは、大変なことであった。

第一、紙もなけれが筆記具もない。どこを探しても、一冊のノートも一瓶のインクもない世界である。氏は、その書写材料をどうやって入手したか記していないが、手製の八冊のノートを手にしただけで、私には、労働キャンプでこれだけのものを作ること自体が、どれほど大変な作業であったかを、思わざるを得なかった。

表紙は、米軍の梱包用の分厚いクラフト紙、中はタイプ用紙である。この紙がよく入手できたと思う。カランバン第四収容所で私の隣にいたKさんは、トイレットペーパーを四枚かさねて、その上に、エンピツでソーッと書いて、戦犯裁判に備えるメモを作っていたのだから。

八冊とも、きれいな和綴じである。だがこのとじ糸は、元来「糸」ではない。カンバスベッドのカンバスをほぐして作った糸である。」