読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

「敗因 一六 思想的に徹底したものがなかった事
 敗因 五  精神的に弱かった(一枚看板の大和魂も戦い不利となるとさっぱり威    
       力なし)
 敗因 七  基礎科学の研究をしなかった事
 敗因 六  日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する


 以上の四項目は、相互に関連がある。徹底的に考え抜くことをしない思想的不徹底さは精神的な弱さとなり、同時に、思考の基礎を検討せずにあいまいにしておくことになり、その結果、基盤なき妄想があらゆる面で「思想」の如くに振舞う結果にもなった。


それは、さまざまな面で基礎なき空中楼閣を作り出し、その空中楼閣を事実と信ずることは、基礎科学への無関心を招来するという悪循環になった。


そのためその学問は、日本という現実に即して実用化することができず、一見実用化されているように見えるものも、基礎から体系的に積み上げた成果でないため、ちょっとした障害でスクラップと化した。」

〇この「空中楼閣を作り出し」というのが、問題だと思います。
あの「東洋的な見方」の中でも、鈴木氏は、「そんなキチキチ突き詰めて考えるより、大雑把にゆったりとしている方が、人間として面白い」(←言葉は正確ではありません)的なことを言ってました。

趣があるとか味わいがある、という言い方で「波乱万丈」さを面白がるところがあると思うのですが、あえてそちらの傾向を求めると、「みんなで平和な安定した社会で暮らしたい」なんて考え方は、女子供の安っぽい人生だ、となって、男一匹関わっておられようか、みたいになります。

侍の腹切りの潔さを素晴らしいとする「空中楼閣」がかなり強烈に私たちの思考の中に入り込んでいるような気がします。

だから、粘り強く根気強く、一歩一歩、建設的に何かを積み上げる、というのが出来ないのではないかと。


「べビューホテルの生活    昭和十九年四月二十九日、天長節の休日を利用してパサイのルビオスアパートの高等官連中がベビューホテルに移転することになった。自分は経理監督部の司政官石村重蔵氏と七階の七五五号室に住むことになった。(略)


ベビューホテルは高等官だけのホテルだが、その住人はほとんど「打つ買う飲む」が専門だった。(略)日本人の知識階級の集まっているこのホテルの品性は余り上等とは言えぬ。(略)


「一億一心」と内地では酒もなく、先祖伝来の老舗を棒に振って工場に徴用されている時マニラだけが、こんなデタラメな生活をしていてよいのか?それより日本人の品性が情けなくなった。

日本人は教育はあるが、教養がないと或る米人が批評したというが本当だ。(略)」



「”思想的”な人の行動が、豊富な知識と高度の学歴をもつ人の集団が、自らの思想で自らを律することのできぬ、まことに「非生産的」な、奇言奇行家集団すなわち「変人会」となってしまったことを示している。

これは太平洋戦争中に多くの知識人が陥った自棄的な精神状態であり、現代にも通ずる問題である。


こうなってしまうと、各人は自己の一定の方針を持ちえず、その時々の状況に流され、無方針で場当たり、前後への思慮を失って誘惑に負ける。同時にその事後処理においても無責任、しかも他への批判だけは一人前だという状態にもなる。

以下の記述はこの問題の表われを示している。



『日本人と現地人の混血児     (略)比島人は米人、スペイン、支那人等、自分たちより勝れた者と混血することを喜び、混血児はミステーサァー、ミステーソー等といって一般比人の上位に位していた。(略)


その結果は彼女らの生活は少しも保証されず、感情は悪くなる一方であり、生まれた子供達は何の教育もされず貧民窟を彷徨う人種となるのが落ちだ。あれは日本人の種だと言われて恥ずかしくない者が何人出来るか?(略)』


この問題は、実は、戦後三十年たった現在でもまだ未解決で、尾をひいている問題である。」



『鈴木参謀と語る   (略)「ドイツの敗因は」と問えば「世界の大国を一時に三カ国も相手にして戦えばどんな強力な国でも勝てぬ」

「日本軍の欠陥は」 「最高人事行政も兵器行政もなっていない。兵器部長等という重職に兵器に何の知識も達見もない者をすえ、一種の閑職とさえしていた。万事この調子だ」

「日本の兵器の遅れているのは無理ないですね」「世界中の陸軍で銃剣術等に兵の訓練の主力を持ってゆき「銃剣何物をも制す」等という思想を持っているのは日本だけだ。(略)」


防衛大臣に稲田氏がなって、女性でそれほどまでに優秀なんだ、と見ていたら、
世界の人を相手に「私たちはきれいでかわいいですよね♪」みたいなことを言う人だった…。

日本にだって、間違いなく優秀で仕事の出来る女性がいるはずです。
でも、そのような人は抜擢されず、稲田氏のような人が重職に着く。

今の日本は、この頃と何も変わっていません。