読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「彼女には私たちの間に起ころうとしていることと、彼女と彼女の母親との間に起こったこととをはっきりと分けて考えられないのだった。

このことについて私たちは何度も何度も、以前に彼女が繰り返し話すことを必要とした時より以上に繰り返して細かく話し合った。


人々は分かれていくのだということ、それが辛く、泣くものだということ、だがそれでもお互いを愛し合っているのだということの文学上の証として、シーラは「星の王子さま」の本にしがみついた。

どんなときにもこの本を手元から離さず、本の一部を諳んじることができた。」


〇この、話し合うことで、乗り越えようとするということに、あらためて驚きます。言葉がそれほど重要で、実際、そのための言葉を持っている人々なのだ、ということに感心します。

私たちの周りでは、むしろ、話さないことで、そのことには触れないことで、時間が解決してくれることを願うような気がします。


「シーラは確かに泣くということを覚えた。私たちの別れを知ってからの何日か、彼女はほとんど涙を流しているか、泣きそうな顔をしているかだった。」




「その涙の下には、歓びと勇気のすばらしい萌芽がほのみえていた。これはシーラにはいままででいちばん難しい課題だった。(略)


だが、いま彼女にはこの別れが来ることがわかっていて、それをなんとか自分でコントロールしようと勇敢にももがいているのだった。」



「私はその紙を開けてみた。手紙のコピーだった。


「アントニオ・ラミレズ殿
チェロキー群コミュニティ・カレッジはあなたがダルトン・E・奨学金の受取人として選ばれたことを、喜んでここにお伝えいたします。
おめでとうございます。今秋からのプログラムでお目にかかれることを楽しみにしております。


私は彼を見上げた。アントンはどうしても唇に浮かんでくる笑みを抑えることができなかった。」


〇ここの部分、以前も読んだと思うのですが完全に忘れていました。本当に嬉しかった!!



「せっかく解放されたシーラの心には二年生のクラスはあまりにも物足りなく、そのために一生懸命何かに夢中になるということが難しくなるのではないかと私は恐れていた。


最後にはチームのメンバーもシーラをサンディのクラスに入れてみることに合意してくれた。」


「シーラはしばらくサンディをみつめていた。「それでもあたし、やるよ。トリイがあたしにそうさせるようにしたの。前はやらなかったんだけど、でもいまはやってる。このワークブック、そんなに悪くないみたいだよ、たぶんこれをやると思う」」




「「子供たちをぶつ?」
にやっと笑いながらサンディは首を横に振った。「いいえ。ぜったいそんなことはしないわ」

シーラは私のほうを向いてうなずいた。「トリイ、この人もぶたないって」」



「このサンスーツは彼女のために昨晩父親がディスカウント・ストアで買ってくれたもので、シーラが覚えている限り父親から何か新しいものを買ってもらったのはこれが初めてだった。その歓びが彼女の中ではじけ、どうしてもじっとしていられないのだった。」



「結局アントンはシーラに彼らはこれからも季節労働者用キャンプで会えるのだということを思い出させたようだ。」



「「あれ、本気じゃなかったんだよ」シーラは息を切らせながらいった。「悪い子になってやるっていったけど、本気でいったんじゃないんだ。いい子にするから」そして厳粛な顔で私を見上げた。「トリイのために」


私は首を横に振った。「いいえ、私のためにじゃないわ。あなたのためにいい子になるの」」


「「さよなら」私はいったが、ぎゅっとこわばった喉からしぼりだされたその言葉はほとんど声にならなかった。それから私は踵を返し、その場をあとにした。」


〇ここで「シーラという子_虐待されたある少女の物語_」は終わっています。

このトリイ・ヘイデンさんの、体験、その考え方や行動力、そして文章力に感動しました。


最後に、プロローグにあった言葉と、エピローグにあったシーラの詩をメモします。



「本書はたった一人の子供について書いたものだ。憐れみを誘うために書いたのでもなければ、一人の教師を賞賛するために書いたものでもない。

また、知らずにいれば安穏としていられるはずの人々の心をわざわざ落ち込ませるために書かれたものでもない。


そうではなくて、本書は心を病む子供たちと一緒に働いていていらいらしないかという質問に対する答えなのだ。また、本書は人間の魂に捧げる歌でもある。


なぜなら、この小さな女の子は私がかかわってきたすべての子供たちと同じだから。私たちみんなと同じように、彼女もまた苦難を生き延びた者なのである。」


「エピローグ

一年ほど前、濡れた跡のある、くしゃくしゃのノートの切れ端に青いフェルトペンで書かれたものが郵便で送られてきた。他には手紙も何も同封されていなかった。


トリイへ、いっぱいの”愛”をこめて

他のみんながやってきて
わたしを笑わせようとした
みんなはわたしとゲームをした
おもしろ半分のゲームや、本気でやるゲームを
それからみんなはいってしまった
ゲームの残骸の中に私を残して
何がおもしろ半分で、何が本気なのかもわからずに
ただわたしひとりを
わたしのものではない笑い声のこだまする中に残して


そのときあなたがやってきた
おかしな人で
とても普通の人間とは思えなかった
そしてあなたはわたしを泣かせた
わたしが泣いてもあなたは大して気にかけなかった
もうゲームは終わったのだといっただけ
そして待っていてくれた
わたしの涙がすべて歓びに変わるまで」