読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 上 <口を利く死者の霊>

「だが私たちが導き出せるのは、このような慎重な一般論がせいぜいだ。太古の霊性の具体的な点を記述しようとする試みはすべて、不確実極まりない。(略)


狩猟採集民がどう感じていたかを知っていると主張する学者の説からは、石器時代の宗教よりも、学者自身の偏見がはっきり浮かび上がって来る。」


「彼らはアニミズムの信奉者だったとは思うが、そこから分かることはあまりない。」


「すでに説明したように、学者たちは、私有財産核家族、一夫一婦制の関係が存在したかどうかといった基本的な事柄についてさえ、意見の一致を見ていない。」



「1955年、ロシアの考古学者がスンギルで、マンモス猟文化に属する三万年前の埋葬地の遺跡を発見した。墓の一つには、マンモスの牙でできた合計3000ほどの珠を糸に通したもので覆われた、50歳ぐらいの男性の骨格が納まっていた。

亡くなった男性の頭には、キツネの歯で飾った帽子が被せられていたようだ。男性の両の手首には、やはりマンモスの牙で作られた腕輪が25個はめられていた。(略)


その後、考古学者たちは、なおさら興味深い墓を見つけた。中には二体の骨格が頭と頭を寄せ合うようにして納まっていた。一方は12,3歳ぐらいの少年、もう一方は9歳か10歳ぐらいの少女の骨格だった。

少年は、マンモスの牙で作られた5000個の珠で覆われていた。そして、キツネの歯で飾られた帽子を被り、キツネの歯250本のついたベルトを締めていたらしい(これだけの歯を手に入れるには、少なくともキツネ60頭から抜歯する必要があったはずだ)。


少女の方は、5250個の珠で飾られていた。(略)二人の子供を覆っていた一万以上の牙製の珠をこしらえるのに、細心の注意を要する仕事を7500時間以上行われなければならなかったわけで、これは熟練職人による三年を優に超える労働に匹敵する!(略)


彼らがこれほど豪勢な埋葬をしてもらえた理由は、文化的信念でしか説明できないだろう。(略)


真相がどうであれ、スンギルの子どもたちは、サピエンスが三万年前に、DNAの命令や、他の人類種と動物種の行動パターンをはるかに超える、社会政治的規準を考案しえたことを示す、有力な証拠の一つだ。」