読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史  上 <革命の犠牲者たち>

「野生のヒツジを追い回していた放浪の生活集団は、餌食にしていた群れの構成を少しずつ変えていった。おそらくこの過程は、選択的な狩猟とともに始まったのだろう。」



「人類が世界中に拡がるのに足並みを揃えて、人類が家畜化した動物たちも拡がって行った。(略)


だが今日の世界には、ヒツジが10億頭、豚が10億頭、牛が10億頭以上、ニワトリが250億羽以上いる。(略)

あいにく、進化の視点は、成功の物差しとしては不完全だ。この視点に立つと、個体の苦難や幸福はいっさい考慮に入らず、生存と繁殖という基準ですべてが判断される。

家畜化されたニワトリと牛は、進化の上では成功物語の主人公なのだろうが、両者はこれまで生を受けた生き物のうちでも、極端なまでに惨めなのではないか。


動物の家畜化は、一連の残酷な慣行の上に成り立っており、そうした慣行は、歳月が過ぎるうちに酷さを増す一方だった。」



ニューギニア北部の農耕民は、ブタが逃げ出さないように、鼻先を削ぎ落す。こうすると、ブタは匂いを嗅ごうとするたびに、激しい痛みを覚える。ブタは匂いを嗅げないと食べ物を見つけられないし、ろくに歩き回ることさえできないので、鼻先を削ぎ落されると、所有者の人間に完全に頼るしかない。


ニューギニアの別の地域では、行先が見えないように、ブタの目をえぐる習慣がある。」


「図15 工場式食肉農場の現代の子牛。子牛は誕生直後に母親から引き離され、自分の体とさほど変わらない小さな檻に閉じ込められる。そして、そこで一生(平均でおよそ4カ月)を送る。檻を出ることも、他の子牛と遊ぶことも、歩くことさえも許されない。

すべて、筋肉が強くならないようにするためだ。柔らかい筋肉は、柔らかくて肉汁がたっぷりのステーキになる。子牛が初めて歩き、筋肉を伸ばし、他の子牛たちに触れる機会を与えられるのは、食肉処理場へ向かう時だ。


進化の視点に立つと、牛はこれまで登場した動物種のうちでも、屈指の成功を収めた。だが同時に、牛は地球上でも最も惨めな部類の動物に入る。」

〇かわいい目の子牛が檻に入れられている写真が載っています。子牛の目がこちらを見ていて、辛くなります。涙が出ます。

「すべての農耕社会が家畜に対してそこまで残酷だったわけではない。(略)
家畜飼育者と農耕民は歴史を通して、飼っている動物たちへの愛情を示し、大切に世話をした。


それはちょうど、多くの奴隷所有者が奴隷に対して愛情を抱き、気遣いを見せたのと同じだ。王や預言者が自らヒツジ飼いと称し、自分や神が民を気遣う様子を、ヒツジ飼いがヒツジたちを気遣う様子になぞらえたのは、けっして偶然ではない。」



進化上の成功と個々の苦しみとのこの乖離は、私たちが農業革命から引き出しうる教訓のうちで最も重要かもしれない。(略)


サピエンスの集合的な力の劇的な増加と、表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっていたことを、私たちは今後の章で繰り返し目にすることになるだろう。」


〇私たちの国の文化は、「集合的な力」を讃えるものではあっても、「個体の多大な苦しみ」を想像するものではない、としみじみ思います。