読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史   上 <物々交換の限界>

「狩猟採集民族には貨幣はなかった。どの生活集団も、肉から薬、サンダルから魔法の道具まで、必要なものはすべて狩り、採集し、作った。」


「だが、都市や王国が台頭し、輸送インフラが充実すると、専門化の機会が生まれた。人口密度が高い都市では、専門の靴職人や医師だけでなく、大工や聖職者、兵士、法律家も、それぞれの仕事に専従出来るようになった。

非常に優れたワイン、オリーブ油、あるいは陶磁器を生産するという評判を得た村落は、ほぼ全面的にその製品に特化する価値があることを発見した。」



「恩恵と義務の経済は、見ず知らずの人が大勢協力しようとするときにはうまくいかない。兄弟姉妹や隣人をただで助けるのと、恩恵に報いることがないかもしれない外国人の面倒を見るのとでは、まったく話が違う。


物々交換に頼ることは可能だ。だが物々交換は、限られた製品を交換するときにだけ効果的で複雑な経済の基盤を成し得ない。」


「物々交換経済では、靴職人もリンゴ栽培者も、何十という商品の相対的な価格を、毎日あらためて知る必要がある。市場で100種類の商品が取引されていたら、売り手も買い手も4950通りの交換レートを頭に入れておかなければならない交換レートは、なんと49万9500通りに達する!


そんなに多くのレートなど知りようがないではないか。
だが、話がさらにややこしくなる。仮に靴一足に相当するリンゴの個数をなんとか計画できたとしても、いつも交換が可能とはかぎらない。


なにしろ、交換の場合には双方が相手の望むものを提供する必要があるからだ。」


「専門の栽培家や製造業者から産物や製品を集め、必要とする人に分配する中央物々交換制度を確立することでこの問題を解決しようとした社会もある。


そのうちで最も大規模で有名な実験はソヴィエト連邦で行われ、惨めな失敗に終わった。」


「だが、ほとんどの社会は、大勢の専門家を結び付けるための、もっと手軽な方法を発見した。貨幣を創り出したのだ。」