読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「シーラと父親は姿を消してしまった。信じられなかった。続く何週間かのあいだ、私はショック、怒り、幻滅、後悔、悲しみ、とありとあらゆる感情を味わった。なかでも悲しみが一番大きかった。シーラとの関係を修復するのにたっぷり三カ月かかったというのに、それがすべて泡となって消えてしまったのだ。


とにかく信じられなかった。私は何度も何度もこの件全体をジェフと話し合い、彼らがどこに行ってしまったのか、彼らが行ってしまうことを示すどんな徴候をわたしが見逃してしまったのかを解き明かそうとした。



私たちは一緒になって、彼らがどこに姿を消してしまったのかを見つけようと努力した。だが、これは私が思っていたよりもずっと難しいことだった。私たちにはシーラや父親を見つけ出すどんな法的な理由もなかったので、じかに問い合わせて答えてもらえる先はごく限られていた。


噓をついたりこちらの意図を曲げるのも嫌だったので、演繹的に推理するか、しつこく頑張るか、運を天にまかせるしか方法はなかった。最初の二つには多少自信があったが、三つ目に関しては、待つ以外どうする事も出来なかった。」



「彼女は私の居所を知っているのだし、以前音信不通になったときとは違って、今の彼女は私を探し出す手続きを踏めるだけの年齢になっているのだから。


結局、最後はいうこうことになってしまった。シーラはふたたびいなくなってしまったのだった。」



「シーラから連絡はなかった。(略)
やがて十月になり、私は幸運に見舞われた。何度も失敗した挙句に、レンズタッド氏がメアリーズヴィルの州立病院のアルコール・薬物依存症患者治療センターに戻っていることを見つけ出したのだ。」


「「なんで俺たちをほっといてくれないんだ?」私がシーラのことを聞くと、彼はそういった。「あんたはあの子のためにろくなことをしないんだから」
「どういう意味ですか?」私は尋ねた。
「ものごとを引っ掻き回すってことだよ。あんたが来るまでは、あの子はちゃんとやっていたんだ。あの子は落ち着いていて、何の問題もなかったんだよ」



私はまじまじと彼を見た。
「何もかもあんたのせいだ。あんたがシーラの気持ちを乱したんだ。だからもうこれ以上あんたにうろうろしてもらいたくない。あんたが引っ掻き回すまでは、シーラはちゃんと落ち着いていたんだ」(略)


「でも私たちが話し合ったことは、シーラが話し合いたがっていたことなんです。彼女は自分に起こったことを誰かに話す必要があったんだと思います。」


「彼女に起こったことだって?あの子に何が起こったというんだね?あの子は自分では何もやってない。あんたがそうし向けたんじゃないか。あの子に
あの男の子をさらって逃げるように仕向けたんじゃないか。


もしあんたがそのように仕向けなかったら、あんなことにはならなかったんだ。あんたが来るまで、あの子は大丈夫だったんだよ」
「すみません、でも__」
「だから、もう俺たちをほっといてくれよ、いいかね?あんたは自分のことだけやってればいいんだ。シーラにはあんたの助けなんかいらないし、これ以上シーラに会ってほしくない。俺にはそういう権利があるんだ。あんたを止めることが出来るんだ」



そう言い終わると、レンズタッド氏はたちあがり、病棟の方に歩いて行ってしまった。叱り飛ばされて、私は車に戻った。運転席に座って初めて、怒りが込み上げてきた。私のせいですって?私が悪いですって?なんて馬鹿な男だろう。


そうはいっても、この面会の結果、彼が私にシーラの居所を教えるつもりがないことは否定のしようがなかった。」



「一月のある午後、アレホの両親が立ち寄り、アレホを正式に養子にしたことを告げた。」


「私はまだ希望を失わず、毎晩帰ってくるたびに郵便物の中にシーラの筆跡を探し求めた。だが、シーラからの連絡はなかった。冬が春になり、ついに春が夏になった。
私たちはまたサマー・プログラムをすることになった。(略)


プログラムは素晴らしかったが、前年のようながむしゃらな熱心さに欠けているように私には感じられた。」



「サマー・スクールが終わって、私は一カ月の休暇をとりウェールズへ行った。イギリスの片隅の北にあるあの霧のかかった不毛の丘陵地が、私にとって第二の故郷になっていた。いったいあそこの何がそんなにも私を引き付けるのか。自分でもよくわからなかったが、あそこが私が戻っていく場所であることは疑いなかった。


ヒースやスレート造りの石の壁に囲まれてそこに身を置いていると、本質的にこここそ自分のいるべき場所だと感じた。この感じは生まれつきのもの、何か私の内から込み上げてくるもののようで、私はそこに行けばいつも得られる心の平和を求めてそこに戻っていくのだった。」