読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「「いつお父さんが仮釈放になるかわかったよ。十月二十八日だって」シーラが言った。
「あなた、どうするつもり?」
シーラは肩をすくめた。(略)



「お父さんはどこに住むの?仕事はあるのかしら?」
「ブロードヴェーへ戻るつもりだと思うよ。ブロードヴェーには友達がいるから。お父さんはあそこで育ったんだよ。おばあちゃんも生きてた時は、あそこに住んでたし」シーラは髪にムースをすりこんだ。



シーラから他の家族のことを聞いたのはこれが初めてだった。シーラが六歳の時に彼女にひどい暴行をはたらいたジェリー叔父のこともふくめて、他にも親戚がいることは知ってはいた。だがシーラは直接一緒に暮らしている家族以外の人のことをめったに口にしなかった。


「そう、とにかくいいニュースじゃない。あなたもここから出られるってことなんだから」と私は言った。
シーラはむっとしたように唇を歪めた。「どうかな。あたし、自分がお父さんのことろに戻りたいのかどうかよくわからない。お父さんは今まで百万回も、もう酒もクスリもやらないって言って来たんだよ。それで、またすぐにやるんだ。今回もあやしいもんだよ。もうこんなばからしいことを我慢するの、うんざりだよ」
私は黙っていた。」



「「自分のやってることぐらいわかってるよ」シーラは言い返した。「お母さん、あたしが探そうとしていたことを、すごく喜んでくれるんじゃないかな。養子に出された子供たちが、何とかして実の親を見つけ出して連絡をとったら、実の親はものすごく喜んだって話、しょっちゅう聞くじゃない」


「そういうケースも、よくあるわね」
「お母さんはどこかに落ちついて暮らしていて、弟もそこにいて……」
「あまり高望みし過ぎない方がいいわよ、シーラ……」
シーラはぷりぷりして肩をがくっと落とした。「言わなきゃよかった。言わない方がいいとわかってたんだ。トリイはやっぱりやめなさいって言うんでしょ」


「そうじゃないわよ、シーラ、わたしはただ__」
「わかってるって、トリイ。でもトリイが思ってるようにはならないから。ふん、お父さんとなんか一緒にいたくないよ。それからこんなところにも絶対いたくない。あたしはお母さんと一緒にいたいの。あたしが苦労して探して会いに行ったら、お母さんはきっと喜んでくれるよ。(略)


あたしが無事だったと知って、きっと喜ぶよ」」


「親愛なるお母さん、
私はお母さんと一緒にくらしたい。お父さんと暮らすのはもううんざりです。何か特別悪いことが起きたというわけではないのです。長い間特に悪いことも何も起こっていないのですが、もうお父さんの生き方にうんざりしたというだけなのです。お父さんのことを心配し、お酒のことを心配し、クスリのことを心配し、お金のことを心配し、お父さんがまた厄介事を起こすのではないかと心配し、もしまたそうなったら、私はどうなるんだろうと心配し、もういやになりました。


私はお母さんとジミーと一緒に暮らしたい。お願いですから、しばらくの間だけでもそんな風にくらすことはできませんか?


「あたしをここから出してくれない?」と私がいつも通りに土曜日に訪ねていくと、シーラが言った。「ここにいたら気が変になりそう」
「別の養護施設を探してくれって言うこと?」私はきいた。
「ちがう。ちがうよ。ただここから出してほしいの。外に連れ出してよ。もう三カ月もここの敷地より外へ出てないんだよ。トリイの家へ行きたいな。連れて行ってくれる?」


「ジェインが許してくれるかしらね。あなた、ここでの成績(トラック・レコード)があまり良くないものね」
「えー」シーラは楽しそうに言った。「あたしのトラック・レコードはすごくいいよ。誰よりも早く走れるもの」シーラは駄洒落にくすくす笑った。」

〇以前、シーラがトリイにサマー・プログラムが終わったら、私はどうなるの?と訊いていたのを思い出しました。あの時、シーラは、プログラムが終わったら、自分はもう今までのようにトリイには会えない、ジェフにも会えない、もとの生活に戻ってしまう、と思って寂しかったんだろうな、と思います。

ここで、「お母さんと一緒に暮らしたい」という手紙は、トリイに向けて言っているようにも見えます。

トリイがいなければ、もっといろいろなことが簡単だった、というのも、そういうことかな…と思いました。
トリイに対する愛着が出てしまって、そのことで苦しむ、ということが起こっているように見えました。


そして、シーラが、生活が変わるたびに、以前のことはなかった事にする、意識的に忘れようとする、と言ってたことについて、ああ、私自身も似たようなことをしているなぁと思いました。

私の場合は、考えてもどうにもならないような辛いこと、困ったことについては、ちょっと、一旦、箱に入れて棚に上げて、無いことにして、日々を過ごす……というのをやってるような気がします。

ずっとその困ったこと、辛いことを考えながら暮らすのは、辛すぎて出来ないのです。案外、トリイもそうなのかも…と思います。

シーラのことがどれほど心配でも、どれほど何とかして上げたくても、出来ないことは出来ないので、一旦、どこかに置いておいて、今を過ごすしかないのです。

今、胸の中に在る「嫌な事」は安倍政権です!早く辞めてほしい。
なんで、あんなわけの分からない酷い政権が続いているのか、いやでいやでたまりません。

警察に逮捕されて当然のことをしている人々が平然と今も権力をにぎっていて、その人たちをこれだけ大勢の人間がどうにもできないという、この状況にいら立つのです。

まるで、オウム真理教の中にいる信者のような気分です。トップは犯罪者。いつ自分たちもひどい目にあわされるかわからない。なのに、これほど大勢の人間がいて、その一握りの悪者をどうにもできないのです。おかしいです。