読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ふしぎなキリスト教  14 ユダの裏切り

「O もし人類の歴史の中で最も影響力の大きかった出来事を一つ挙げろと言われたら、僕は、イエスの処刑だと思うんです。たった一人の人間の死が、結果的には人類史に圧倒的な足跡を残し、いまでも大きな影響を及ぼしている。(略)


だから他の使徒もあまりかっこよくはないわけですが、しかし、彼らはイエスの死後、原始キリスト教団を作る上で最も重要な人たちになっていく。死後も最高の聖人としてあがめられた。


しかし、ユダだけは、どういう角度から見ても救いようがないのです。(略)


もっと邪推をすれば、最後の晩餐で「お前たちの一人が…」と言っている時、イエスは実は誰が自分を裏切るかは知らなくて、弟子たちの様子を見ながら、最も動揺していて、暗示にかかりそうな人を探し出すために、あえてそんなことを言ってみたのではないか。(略)

H 大澤さんの見方には、とても道理があると思う。
福音書福音書として成り立つためには、イエスは無罪でなければならない。(略)つまり、冤罪でなければならない。

O そうですね。

H (略)そすると、イエスのことを理解しないで、あるいは理解し過ぎて、イエスを受け入れられず、この筋書きを実行する人々、悪役がいないと、福音書は成り立たない。(略)


弟子たちが賢明で有能すぎると、イエスは捕まらず、死刑になれない。だから、それなりにドジでないといけない。(略)


ユダの裏切りがプロットのために絶対必要なのは、大澤さんの指摘通りなんだけど、そうすると、福音書で最も大事な役割を果たし、神の計画を完成させているのは、ユダなんです。(略)


O 考えてみると、この復活劇のポイントは、誰かがイエスをきっちり裏切らなければならないということですね。だから、ユダの役割は絶対に必要です。
ただ、「ユダの福音書」みたいに明示的に裏切りを計画してしまうと、この事件のインパクトがかなり減殺されることも事実なんですよね。(略)


H だから聖書に入らなかったんだと思う。

O それを入れてしまったら、処刑・復活のストーリーが台無しになっちゃいますからね。それでもやっぱり、ぼくはいつもユダに非常に同情します。」