読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ふしぎなキリスト教  3 ローマ・カトリックと東方正教

「O さて、ここまで「キリスト教」と一括して呼んできましたが、ほんとうは大きく二つの流れがあることを押さえておかなければなりません。
日本人がキリスト教についてイメージするときに、どちらかというと中心にあるのは、カトリックですね。


これは、ローマを中心とするキリスト教、西ヨーロッパで繁栄したキリスト教です。十六世紀になると、プロテスタントというものが出てきますが、それは「カトリックにプロテストする者」という意味ですから、広い意味では、カトリックの流れの中に含まれます。


しかし、これとは別に、東側のキリスト教、正教(オーソドクシー)と呼ばれるキリスト教もある。(略)



H キリスト教には、相反する二つの組織原理があるんですね。
ひとつは、みな平等だという考え方です。神の前でみな平等なんですから、人間は互いに平等なんです。
そこで、組織の中の上下関係(ヒエラルキー)をなるべく作るまいとする傾向がある。


もう一つ、これと逆の論理は、統一を重視する。そのため、ヒエラルキーのある組織を作る。
どちらも行き過ぎると、キリスト教的でなくなるので、両方を巧妙に組み合わせる。
で、教会のヒエラルキーはどうなったかと言うと、まず、各教会に長老がいて、それから主教がいて、その上に、地域を束ねる大主教がいて、それからそれらを束ねる総主教がいて……というふうになっている。これは、ローマの軍隊をまねしたものだと言われている。(略)



総主教座の下にはたくさんの教会があって、様々な解釈を行っていた。そこで、全体会議を開いて、正統な教義を決めていたのでした。(略)


そして対等に、議論を行なうんですね。平等を重視する原理も、一応残っている。
こうした会議に参加しないか、会議の結論を認めないか、会議で異端として追放されたかしたキリスト教の分派が、多くあります。(略)


東方教会ギリシア正教)と西方教会ローマ・カトリック)は、こうしたマイナーな教会や異端グループとは異なって、キリスト教会の本流です。全部で六回開かれた公会議の内容をすべて承認しており、それに照らして正教と認められている。


この意味で、東方教会西方教会は違いがない。
東方教会西方教会が分裂したのは、スポンサーであるローマ帝国が、テオドシウス帝の死後、東西に分裂したからです(395年)。


分裂してしばらくすると、両教会合同の公会議が開けなくなった。道中の警護や経費の負担が出来ないからです。公会議が開けなければ、解釈の違いを調整する方法がない。そこで、両教会の解釈がしだいに食い違って行って、合同できなくなり、やむなく別々の教会になって、今日に至っているのです。


「正統」教会も「カトリック」教会も、「本物」の教会の意味。温泉饅頭の「元祖」と「本舗」のようで、どっちがほんものかわからない。
では、実質的にどこが違うか。


まず、典礼の言語です。(略)
それから、東方教会は、新しい地域に布教するのに、その地域の言語を典礼に採用したので、次々に教会(総主教座も)が分裂していった。ロシア語を使うロシア正教会セルビア語を使うセルビア正教会、という具合です。これは、ラテン語以外認めず、カトリック教会を分裂させなかった西方教会の行き方と反対です。


西方教会は、「ひとつの教会+多くの国家」の体制、すなわち、西ヨーロッパ世界の土台を作りました。



O (略)しかし、考えてみると、そもそもなんでローマ教会がラテン語を使ったのか、よくわかりません。

H 本来なら、ギリシア語であるべきですね。(略)



その事情を言うと、イエスが話していたのは、ヘブライ語だった。イエスギリシア語が出来なかった。一方、パウロは書簡を、ギリシア語で書いた。(略)福音書は初めから、神の言葉の翻訳だと考えても良い。それなら、それをまたラテン語に翻訳しても、ばちは当たらない。


ラテン語は、ローマ帝国の西側に広まっていた。そこの人々にとって、カトリック教会がラテン語を使ってくれるのは、便利でありがたかったのではないだろうか。(略)」