読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

私は女性にしか期待しない

「新人類
日本人の命がのびました。
以前は男は70歳になると、これほどの長生きは古来稀であると言って古希の祝いをしました。今70歳の男は、ざらにいます。



男は70歳から80歳までを、どうやって生きるかが問題になりました。これまでなかった生き方を探すのですから、まさに彼らこそ新人類です。
私は80歳の関所をこえた人間です。友人たちが70歳から80歳まで、どんなに生きたかを見てきました。(略)



クラス会であう友人達には、することがなくて困っているという人はいませんでした。
みんな70歳になるまでに身につけていた空白の埋め方をつづけているだけです。
これで答えが出たと思うのです。70歳から80歳までをたのしく生きるためには、その年齢になるまでに、人生に空白をつくらない方法を身につけておくということです。



危険な年齢は60歳からです。空白を埋める方法を何も考えなかったし、持ってもいなかった人は、アルコールの快感に逃げ込みます。けいこをしないでいいし、準備もなしに、いい気持ちになれるのですから、もっとも安易です。アルコール依存症です。

いまひとつの依存症は医者依存症です。これは60歳後半からおこるのが普通です。どんなわずかな異常でも治療されることに、疑いを持たない新人類が、病院の待合室にあふれています。空白をうめている風景です。」




ながいことごぶさたしていた患家から電話をもらいました。以前に赤ちゃんをつれて毎月のようにきていたお母さんの、
「ちょっと主人のことでご相談したくて」
という元気のない声です。


日をきめて来てもらうと、彼女より頭ひとつ高い青年といっしょです。それが以前見ていた赤ちゃんなのですが、学校を出て商社につとめています。
きいてみると、父親が、お酒を飲み過ぎてこまっているというのです。(略)


長く断酒できているのは、いい医者にめぐり会えた人です。全身の検査だけでなく、なぜ酒を飲まねばならなくなったかという個人の事情まできいて、それを改めるように家族も一緒にカウンセリングしてくれる医者に掛かった人は幸運です。


この数年、私の周囲に定年後のアルコール依存症が大変多くなりました。すべてが、勤務している時は会社人間で、ほかに何の趣味も持たなかった人です。
働かせすぎが、第一の原因です。人間としての教養をつむ時間まで奪われてしまっただけでありません。家庭が崩壊寸前のところまできています。
「お酒やめないと離婚しますよ」
といっても、かまわないよという返事がかえってくるのが、おさだまりです。」