「有機農業の会
「有機農業の会」というのが各地にあります。無農薬の野菜を、産地の農家から直接に送ってもらって、消費者の仲間でわけようというのです。直送された果実や野菜の配分を引き受けているのは、女性です。
市販される野菜は、流通市場の都合で、外見のきれいなもの、長持ちするものがたっとばれて、加工されています。外見や持ちがわるくても、薬を使っていない自然の食品がほしいというのが、会員の願いです。
永年、市民の立場から、メーカーと闘ってこられた高橋晄正さんは「自然食品は安全か」(農文協、89年)のなかで、有機農業にふれて、書いておられます。野菜に掛かっている殺虫剤より畑にまく除草剤が魚に入る方が危険だという警告です。
「何はさておき、庶民は状況から切り離しては特別の付加価値が認められなくなった無農薬信仰に幻惑されることなく、。安全度の高い魚の食べ方を研究する必要があるのではないか……しかしより根本的に問われているのは、フロンガスなみに有機塩素系除草剤の使用禁止を国際的に呼びかけることではないか」
この本を数年、有機農業の会をやっている専業主婦に送ったところ、返事がきました。
「高橋さんのおっしゃるのは、よくわかります。だが数年、産地の農家の方とおつきあいしているうちに、お互いに信頼関係が出来上がって、安全な地球にしようという市民的連携になりました。
個々の野菜にどれだけ農薬が残っているかよりも、金もうけだけの生産の中で、ひとりひとりの市民が力を出し合って抵抗することに意味があると思います。」
これを読んで彼女の数年の労力奉仕は、無駄でなかったと思いました。
主婦は単なる消費者でなく、未来をつくっているのです。出産、育児、家事、すべて未来の下ごしらえです。
専業主婦の仕事は、ただ働きのようですが、支払われるのが未来だから見えないだけです。
人が人に価格のない行為を贈物にするのが無償の行為です。なんでも値段がついている商品社会に住み慣れた私たちは、無償の行為を忘れてしまいました。
だが、自分の人生を振り返って、人から受けた美しい行為は、ことごとく無償であったことを思い出しませんか。
未来のために無償の行為を日々くりかえす主婦は、誰よりも無償の行為の美しさに気がつきます。値段標のついていない空気、水、森林のほんとうの美しさのわかるのは主婦です。
値段のついたものをつくるために、きれいな空気や水や森林を汚して恥じない企業にとも腹を立てるのは主婦です。
〇 政治的な力を持たなければ、結局は何も変えられない。でも、ここで、松田道雄さんも言うし、他の多くの人も言うように、「政治に期待などできない」。この風潮を、なんとか出来ないものかと思います。