読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス まえがき

〇 橋爪大三郎・小林慶一郎著 「ジャパン・クライシス _ハイパーインフレがこの国を滅ぼす」(1914年発行)

を読み始めました。浜矩子さんの「どアホノミクスの断末魔」を読み、「白い地下経済」が提案されているのを知っても、具体的に何がどう起こるのかについては、さっぱりわかりません。


ただただ不安になるばかりなので、少しでも、何かがわかれば、と
読んでみることにしました。あの「不思議なキリスト教」で、信頼できる人だと
感じた、橋爪大三郎さんが、書いている、ということで、読む気になった、という面もあります。

経済については、全くわからないし、心配性な人間なので、悲観的な妄想は際限なく広がるのですが、ほとんど、感想は入れずに、メモしていきたいと思います。


「本書は、とても単純なことをのべています。
第一に、政府の借金が増えていること。……政府の借金証書である国債が、1000兆円を超えています。国民の預貯金総額の、三分の二以上が紙切れ(国債)に化けてしまいました。



国債の償還や利払いのために国債を発行する「雪だるま」状態で、このままだとあと10年もしないうちに、国債の買い手がいなくなります。」


〇ここでは、「あと10年もしないうちに」と言っていますが、すでにこんな記事を見ました。「日刊ゲンダイ 国債の売買が成立しない


「第二に、危機(クライシス)が起ること。……国債の買い手がいなくなると、八方ふさがりになります。国債が値下がりする→金利が上昇する→金融危機が起こる→大不況になる→これを防ごうと、日銀が国債を買い支えると、通貨供給量が増える→ハイパーインフレになる→国民の財産が奪われる。



針地獄か、それとも、血の池地獄か。どちらにしても、生き地獄をまぬがれることはできません。
第三に、それが嫌なら、増税しか無いこと。……まだ間に合います。いますぐ財政再建に着手すれば(たとえば、消費税を35%にする)、生き地獄は避けられます。増税は望ましくない面があるとしても、ハイパーインフレよりはるかにましです。



単純な理屈です。中学生にもわかります。誰もが頭の片隅で、不安に思っていることです。私(橋爪)も気になって、国債の話に注意してきました。
ところが、だんだんわかってきたのは、このままでは危機(ジャパン・クライシス)を避けられないと、専門家が口にしないことです。経済の知識がちょっとあればわかるはずなのに。なぜなのか。



海外ではどうかというと、誰もが言います。「国債の発行し過ぎ?増税すればいいのさ。日本は先進国なんだろう。それぐらいの余力はあるはずだ」。本書の主張と同じ、誰が考えても、結論はこれしかないのです。



海外の人々は、日本の国内事情に詳しくありません。いっぽう日本の専門家は、増税がどんなに難しいか、よくわかっています。むしろ、わかりすぎです。政治家も、国民も、賛成するわけないよ、と思ってしまうのです。



専門家が黙っている理由。それは、増税を「やるしかない」とわかっているのに、「出来っこない」と思っているからです。やるしかないのに、出来っこないのは、矛盾している。苦しい。そこで問題から目を背け、考えないことにする。これがおそらく、日本の専門家が何も言わない理由です。



業界の「おきて」もあるのでしょう。みんなが黙っているのに、誰かが口を開けば、仲間外れにされます。国債は多すぎて、銀行も生命保険会社も、しこたま抱え込んでいます。万一これが値下がりすると、大変です。値下がりが怖くて、国債を買い続けるしかない。政府も日銀もみんな共犯で、本当のことが誰も言えないのです。


               ※



専門家が黙っているのなら、誰かが、声を上げなければならない。
これが、私(橋爪)が、本書を出さなければと思った理由です。
でも素人がいきなり、偉そうなことは言えません。



そこで旧知の、筑摩書房編集部に相談しました。どなたか経済の専門家で、財政学に詳しくて、国債の問題に積極的に発言している勇敢なひとはいませんか。
いました、と返事があって、小林慶一郎先生と一緒に本が出せることになりました。



対談は、2013年の秋に3回、行われました。もっぱら私が聞き役になり、小林先生にイロハから教えて頂きました。この問題を考えるのに、ちょうどよい手引きになっていると思います。


対談してわかったのは、二人とも同じことを考えていたこと。専門的な内容は小林先生にお任せして、私(橋爪)は、一般の読者に分かりやすく伝えることに徹しました。



本書は、3部からなります。
第一部は、国債がなぜこんなに発行されているのか。財政や、国債の仕組みや、銀行や生命保険や企業の財務や、マーケットや外貨取引や、……について、基本的なことがらを押さえました。経済に詳しい読者の皆さんには、復讐のつもりで読んでいただければと思います。



第二部は、ジャパン・クライシスが現実のものとなったら。これから起こる日本経済の地獄を、肌身で実感してもらおうと、小説風のストーリーを用意しました。第一幕から第四幕まで、対談とサンドイッチ「になっています。
一旦始まった危機が、とめどなく進行し、人々の生活を押しつぶしていく様子が描かれます。


第三部は、ジャパン・クライシスを防ぐには、今ならまだ、間に合います。財政再建を宣言し、消費税を35%に増税して、50年間税金を払い続けるのです。酷なようですが、国民の資産も、金融システムも、社会保障も、市民生活も守られる。これがもっとも合理的な唯一の選択であることを、検証します。




               ※





ジャパン・クライシス(日本の経済危機)が、やってくる。
本書は、こう予言します。
けれども、私ども著者二人は、この予言が外れることを、願っています。


ジャパン・クライシスは、最悪の破局です。詳しくは第二部をお読みいただきたいのですが、人々の資産はハイパーインフレで吹き飛び、年金も破綻して、退職して定収入のない高齢の人々がとりわけ苦しむことになります。銀行や企業も倒産し、現役世代の人々も路頭に迷うでしょう。若者は進学どころでなく、誰もが人生を狂わされます。




私ども著者が願うのは、読者の皆さんが、この冷厳な事実に目を向け、迫り来るジャパン・クライシスの危機について、正確な認識を持っていただくことです。そして、自分たちの生存を守れと、声をあげて頂くことです。政治家たちは、真実から目をそむけ、政府が景気対策国債の増発)を進めれば、経済も暮しも良くなるかのような、幻想をふりまいてきました。



そのため危機は、ますます深まりました。もはや一刻の猶予もなりません。それを自分のこととして、考えていただきたいのです。



社会には、法則があります。経済にも、法則があります。その法則は、人々の主観的な願望や希望では、動かせません。



社会科学の任務は、この法則を明らかにすることです。そして、この法則に従うなら、近い将来にどういう結果が待っているか、警告することです。本書はこの、社会科学の使命を果たそうとするものです。



この警告が、一人でも多くの読者の皆さんに届き、国民の声が世論を動かし、政治を変えて、日本がこの破局から逃れるように。そう切に願うものです。

    二〇一四年八月一五日                 橋爪大三郎」