読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「米中は日本の危機にどう対応するか?

橋爪   日本円を買い支えるには、政府が保有するアメリカ国債を売却する必要があるんじゃないでしょうか。


小林   その通りです。


橋爪   しかしそうなると、アメリカ政府はドル売りはともかく、アメリカ国債を売るなんてとんでもない、といった態度に出るのではないでしょうか。日本はほんとにアメリカの同盟国なのか、という問題になって来る。


小林   はい。そういう政治的な摩擦が生じて、結局、売却できなくなるかもしれません。しかし、そうなると、円安がますます進んでしまう。


橋爪   ここまでくると、世界中の機関投資家や政府は、気が気じゃなくなって、日本からの情報を求め、対応を協議するはずです。
彼らが最も危惧するのは、日本発の金融危機が、海外へ飛び火することですよね。


小林   ただ、欧米圏の金融機関は、日本の試算をさほど保有していませんから、危機が一気に拡がることはなさそうです。


例外はアジア圏です。(略)
中国のほか、東南アジア各国で貸出金が急激に増えている。それが縮小する可能性があります。


橋爪   その程度ですめばいいが。アメリカは、無事でしょうか。


小林   日本の金融機関がおかしくなっても、アメリカは大丈夫だと思います。一九九八年の金融危機でも、それが海外に飛び火することはありませんでした。(略)


ですから、日本で生じた問題が、すぐに欧米のマーケットに深刻な影響を及ぼすとは考えにくい。


橋爪   ギリシャ、イタリア、スペインの場合は、違いました。EU全体の問題になった。日本の場合、国債のほとんどを金融機関や投資家が保有している。やはり、この違いが大きいですか。


小林   その通りです。もし日本国債の多くを外国人が保有していたら、ギリシャ危機のように各国へすぐに波及しますが、日本国債の九割以上を日本人が持っていますから、海外の金融機関に影響が及ぶことはまずないと思います。


橋爪   とすると、日本国債が暴落したとsちえも、世界経済から見て、それほど心配ないんですか。


小林   はい。ただ、日本経済が混乱することで、日本の企業がこれまで欧米に輸出していたものが途絶えてしまう可能性はあります。実際、東日本大震災の後、そういうことが起きました。しかしそれは金融システム全体を揺るがすような大問題とはなりえません。



(略)



小林   いえ、おそらく危機の初期段階で、「日本の国債をぜひ買って下さい。もっと買って下さい」と各国に呼び掛けるのではないでしょうか。


橋爪   言われた国は、迷惑じゃないですか。


小林   しかし、言わなければなりません。「増税財政再建も、責任を持ってやります。日本国債は本来、安全です。長期的には決して値下がりしません。安全な資産ですから、どうか買って下さい」と、中東や中国に売り込みに行く。今もやったいますが、こうした営業活動を、ますますやらざるをえなくなる。


(略)


小林   買ってくれないと思います。

橋爪   だとすれば、『国債を買って下さい」じゃなくて、緊急融資を頼むべきでしょうか。


小林   協力してくれそうなのは、アメリカと中国しかありません。この二カ国が対応してくれるかどうかは、国際政治や安全保障の見地から検討しないと、何とも言えません。



橋爪   私の予想では、中国が日本に手を差し伸べて、国債を「買う」と言ったとたんに、アメリカが割り込んで来て、「じゃあ、我々が全部買う」というはずです。


小林   中国に対してアメリカは、そう出ざるを得ないでしょうね。


橋爪   中国が日本国債を手にすれば、日本政府に対して強力な発言力を持つことになる。

小林   いっぽうでアメリカの世論は、「日本の国債なんか買うべきじゃない」となるでしょう。


橋爪   はい。


(略)


小林   合意が出来なければどうなるか、全くわかりません。延々と米中間で話し合いが為されるのでしょうか。しかしそうなると、インフレ率や金利が不安定になる。」