〇 ※本来ここには、「2 ハイパーインフレ、始まる」が続くはずでした。
間違えて、そっくり飛ばしてしまいました。
こちらにメモします。
「3 焼け野原
scene3
(略)
海外ニュースは、日本の経済危機が憂慮されている、と報じている。
……日本銀行はこれ以上、貨幣供給量を増やさないよう、手持ちの国債を市中消化しようと売りオペをはかっていますが、買い手がなく効果がありません。このため金利が急上昇する気配です。そうなれば、日本のメガバンクが危機に陥ることが懸念されます。
(略)
突然預金封鎖が行われたのは、翌月のことだ。
金曜日の夕方に、銀行とコンビニのATMがすべて使用停止になった。引き出し限度額は、ひとり一〇〇万円になる予定だという。プログラムの書き換えのため一週間かかり翌々週の月曜日まで払い戻しができない。
預金封鎖は、金融機関の破綻を救うためという。もちろん、インフレ対策でもある。
すでにインフレは、一〇〇〇%に達している。金利も上昇して、五%ほどになった。
ここまでのインフレになって見ると、三%か五%かそこらの消費税の増税に、反対だと騒いでいた議論がばかばかしい。その何十倍、何百倍もの資産を、有無を言わさず根こそぎ奪ってしまうのが、ハイパーインフレなのだ。
(略)
……新円は、一〇〇〇円を一円とします。マイナンバーを用いて交換できる金額に上限を設けるので、貨幣量を確実に、押さえることが出来ます。すなわち、預金封鎖以前に個人や企業が引き出して保有している現金を、確実に捕捉来ることが出来るのであります。
このため、IMFから一〇〇〇億ドルを借り入れる予定で、目下、詳細を調整中であります。以上のような措置により、図らずも我が国を見舞った悪性のインフレを、克服できる見込みであります。以上のような緊急措置を、国民に受け入れやすいものとするため、新円切り替えをデノミの一種だとPRしてまいる予定で……
(略)
IMFは、一〇〇〇億ドルの緊急融資の条件として、再生債権の約束を求めている。これまでになく厳しいものになるはずだ。杉田はそれを見越して、物賀と今仁の二人に、一週間で立案を依頼したのである。
「ご苦労さん。」
と、杉田は二人を見るなり、ねぎらいの言葉をかけた。
物賀が、レポートのページを繰りながら、説明する。
「IMFの融資条件は、条約に等しい。財政再建を求めるとは、予算権を制約すのと同じです。日本の主権が制約される、ということです。だから以下の政策は、国内の合意より先に、IMFに対する約束である。いったん約束した上は、これを実行することが、日本国政府と国民の義務になります。
第二に、消費税を三互%にする。地方交付税を廃止する。公務員を半減する。
第四に、新しい年金制度をスタートし、若年世代は積み立て方式とします。
年金を停止し、医療保険を選択的給付にすることで、国の負担を半減できます。国債費もインフレのおかげで、負担がほとんどなくなる。消費税を増税すれば、財政均衡を実現できるうえに、選択的福祉を行うこともできます。」
物賀は、試算例を示し、財政が均衡しうることを示した。
試算例をみると、公共事業や農業関係の予算は、ほとんど計上されていない。骨格予算よりも厳しい、骸骨予算だ。
うむ、と杉田は試算例に真剣な目を凝らしている。
……………………………… 」