「コスト度外視のバラマキ財政
橋爪 日本政府のやっていることは、合法です。犯罪的ではあっても、犯罪ではありません。犯罪ではないから、その刑事責任を追及することはできない。
でも、政治的な責任は、あります。憲法二九条が定めるように、政府は、国民の財産を守る義務がある。それを果たしていません。
小林 おっしゃる通りですね。問題は、こんなにも借金が膨らんでしまい、ハイパーインフレが避け難い状況になってしまったのはなぜか、ということです。財務省の役人は、借金を減らさなければならないと、ずっと考えて来た。にもかかわらず、ひたすら「財源をよこせ」と言ってくる政治家たちを抑えきれなくなって、借金がこれだけ膨らんでしまった。
しかも戦前の日本と同じで、責任の主体がはっきりしていません。一体、誰を「悪い」と言ったらいいのか……。
(略)
が塗炭の苦しみを味わわねばならなくなった。その責任は政治家と官僚が一体となった共同体にあるということですね。
橋爪 そうです。その人びとがまず、許しがたい。
小林 ただ、その一方で、政府は、本来なら実現できなかったはずの手厚い福祉を長年にわかって国民に提供していた。その事実をどう考えればいいでしょうか。もちろん、後になってそのツケをを若い世代の国民が支払わされることになってしまうわけですが。
(略)
小林 こんなに豪勢な料理(充実した年金と医療)を食べていいのかなと思っていたら、案の定、後になって、ものすごい請求書が来てしまったという(笑)。しかし、この値段でこんな豪勢な料理が食べられるわけがない、ということを国民はうすうす「知っていた」のに、知らんふりをして食べ続けてきたのですよ。
橋爪 納税額も、議会で決まっているんです。(略)
小林 そこでの決め方がおかしいんです。
第二には、その結果、資産の喪失、失業や所得減少、さまざまな生活破壊を引き起こしてしまう、ということです。こんなことはあってはならないのに、政府のせいで、そうなってしまった。
小林 通貨の価値を安定させるという責任があるのに、それが果たせない。
橋爪 第三に、これは、弱者の切り捨てです。政府はこれまで、食事の後におやつも配っていたのに、今度は、食事さえ満足に配れなくなる。財政再建のために、公共サービスを大幅にカットせざるをえなくなり、そのツケを、弱者がかぶるかたちになっている。
この痛みは、回復不可能です。高齢者は、ひどい晩年を過ごして、まもなく死んでしまう。景気がそのうち回復すると言われても、死んでからでは手遅れだ。」