読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「三等国へ転落

小林   おっしゃるように、貧困に陥った高齢者には立ち直る余地がありません。

橋爪   資産が全部、吹っ飛んでしまうわけでしょう。しかも、うまく立ち回って得する小金持ちとか、インフレに付け込んで大儲けする人も、必ず出てきます。社会的不公正が拡大する。


でも、そういう勝ち組はごく一握りで、大半の人々は大きな重荷を背負うことになる。理由のない不公正が生じるわけです。
国際関係も激変するでしょう。日本の国際的地位が低くなり、円安が進み、輸入品が高くなる。それだけではありません。国民の血と汗の結晶である日本の資産を、外国資本が、安く底値で買えるようになる。これも一種のドロボウです。と言って悪ければ、ハゲタカです。


小林   ただ、それは悪いことばかりではありません。海外から資本が流入してくれば、企業の組織が存続し、いろいろな改革によって企業が活性化する。(略)


橋爪   あと、国民は、巨大な喪失感に見舞われると思う。戦後、奇跡の復興を遂げたとか、世界第二位の経済大国だったとかいうプライドが、ずたずたになれる。おそらく名目GDPのランキングでも、世界で何十番目かに転落してしまう。


小林   そうなる可能性はありますね。


橋爪   私が小学生の頃、世界には、一等国と二等国と三等国がある、と習いました。日本がその三等国へ転落する。(略)


小林   ある意味、ハイパーインフレは戦争と同じです。財政をどう運営するかという戦略を政府は大きく間違えてしまい、社会を大混乱に陥れてしまう。ここで、戦前の軍事費に相当するのが国債費です。


橋爪   先の大戦で日本が戦争に敗けて、連合軍い占領された時には、民主日本へ、経済大国日本へという、目標の切り替えが起りました。そのころの日本人には、次のステージへ行くのだという目的意識や、これでやり直しができるという解放感があったはずですが、j今度ばかりは、想定外の失敗で、元気が出ないと思います。


(略)



小林   底まで落ちてしまえば経済は必ず反転し、復活します。


橋爪   企業が倒産したとします。職を失った人は、「低賃金でもいいから、とにかく働きたい」と思っている。いっぽう、倒産した企業の設備は別の企業に買い取られ、新たな事業展開のために用いられることになる。そうなると、失業していた人も、その企業に再雇用される。つまり、どん底の不景気によって、新たに企業が生まれるための条件が整うようになるわけですが、それには少し時間が必要です。企業がつぎつぎと倒産しているような状況では、誰も起業しようとは思いませんから。」