読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「「選択と集中」という国土設計

橋爪   従来の発想で従来の政策を続けると、財政が破綻して、日本が持たない。この観点から政策を点検すると、どんな課題が見えて来ますか。


小林   いくつかの分野に分けて考えてみましょう。
まず、地域開発の問題を考えてみたいと思います。日本の人口が、向こう一〇〇年で今の半分以下になるとすれば、国土の隅々にまで道路を走らせ、上下水道も整備するといった「国土の均衡ある発展」は、もはや成り立たないと考えるべきです。


コンパクトシティ」という言葉があります。各地に中核的な都市を作り、周辺地域から住民を集めていくという政策です。これによって、周辺地域の公共施設や道路、下水道は不要になりますので、国や地方自治体の経費がドラスティックに軽減されることになる。


橋爪   全く賛成です。
そうなると現在の、都道府県と言う行政区画が邪魔になりませんか。


小林   大学にしても、地方の空港にしても、各県に一つではなく、もっと広域の中で一つを選択し、それ以外は廃止するという「選択と集中」が必要です。本当に必要な大学や空港だけを 残して、無駄な部分は省いて行かなければなりません。


橋爪   地方の公共交通機関も撤収せざるをえない。


小林   赤字鉄道を撤収させるような場合、周辺住民の足が失われ、生活の質が低下してしまうという問題が生じます。こういう問題が起きないよう、人が住むエリアをもっと集中させる。



コンパクトシティ」という考え方を導入して、なるべく周辺住民が中核都市に住むよう、あるいは自然に住みたくなるような政策を考える必要がある。それにはいろんな知恵が必要で、すぐにはうまくいかないと思いますが、手をこまねいているわけにはいきません。



橋爪   地球環境にも、それは意味のある政策ですね。これが成功したら、都市化が進みつつある途上国のモデルになりますから重要です。



小林   「選択と集中」という原則に基づいて、人が住む範囲をダウンサイジングし、中核都市以外のところは自然が回復するようにする。そういう国土設計を考えることが、これからの一〇〇年にとって重要ではないでしょうか。


二つ目の課題は、少子化にどう対応するかということです。人口減少がある程度のところで止まって、その状態が安定しなけれが、社会構造を維持するのは難しい。ですから、少しでも早く出生率を回復させる必要がある。



それにはこども手当のようなバラマキ政策ではなく、保育施設を増やしたり、高齢者が子育てに参加できるような仕組みを地域ごとに作ったりしてはどうかと考えています。


橋爪   賛成です。
教育費の負担を軽減する政策も必要です。子供をもつのをためらう理由の一つに、子どもに費用が掛かり過ぎることがあります。費用の大半が教育費です。(略)


では、どうすればいいのか。中学高校の教育力を回復して、塾や予備校に行かなくて済むようにする。大学の入試をやめて、代わりに出口管理にする。奨学金の貸与を拡充して、費用負担すれば誰でも大学に行けるようにする。「選択・責任・連隊の教育改革 完全版」(岩波書店、一九九九年)で提案した通りです。


小林   非常にラディカルな改革ですね。受験制度を廃止し、卒業資格を厳しくするという改革案は、高校でも大学でも効果がありそうです。


橋爪   そうです。


小林   大学には、学業成績が基準を満たさなければ自動的に退学させる仕組みがあってもいい。私がシカゴ大学の大学院生だった時には、クラスの半分は進級試験に合格できず退学しました。」