読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

人間にとって法とは何か

「第2章  ハートの法理論

1 H・L・A・ハート

法律家の社会的地位について

ハート(H.L.A.Hart 一九〇七ー一九九二年)という人は、日本ではちっとも有名ではなくて、私も法学部の人と研究会をやっていて、そこで紹介されるまで知らなかったのですが、読んでみたら面白かった。



英米圏ではけっこう有名な人らしく、法理学を研究している人です。
法理学(jurisprudence)とはどういう学問でしょう。
日本でも、こんどロースクールができることになっています。



英米圏では、法学者の社会的地位がとても高い。法学者というか、法曹家、まあ、弁護士ですね。英米圏で社会的地位が高いのは、弁護士、医師。それから牧師や神父などの宗教家です。(略)



なぜ法律家の社会的地位が高いかというと_弁護士と検事と裁判官の区別は、アメリカではあまりなくて、まとめて法律家なのですけれども_それは法律をつくれるからです。日本のシステムだと、法律は国会でつくって、裁判官はそれを機械的に適用するだけ。司法試験を通ればいいのであって、ほかのことは何も知らない、というタイプの人が多くなる。



だけどイギリスでは成文憲法もないわけで、慣習が大きな意味を持つ。(略)


全く初めてのケースだったら、自分の法律的直観によって、適当に判決を下すしかない。(略)
杓子定規に法律を適用するわけではないので、人間というものについて、深い洞察がないといけない。



それを訓練するのが、アメリカだとロースクールです。そこは司法試験の勉強と違って、科学や芸術、文学や歴史、いうろんな学問の卒業性が来て、大学院で法律を勉強するのです。十八歳でいきなり法律を勉強し始めて、二十一歳で司法試験に合格するなんて、早すぎる、もう少し人生の滑った転んだをやって、大人になってから勉強しに来てくださいという考え方です。
とてもいい考え方だと思います。


私はアメリカのある大学の入学オリエンテーションを一度見学したことがあるんです。将来ロースクールに進もうという新入生も来ている。法律家になるために、学部の十八歳から二十二歳まで何を勉強したらいいでしょう、と誰かが質問したら、ロースクールの先制が、何を勉強してもいいですよ、好きなことを勉強して下さい、と答えた。



芸術?結構です。医学?結構です。工学?結構です。皆さん、ここはアメリカですよ。どんなことでも裁判になるんです。(略)


というわけで、ロースクールは討論形式で授業します。そういう様々なバックグラウンドの人々が寄ってたかって議論する。まさに人生の縮図、社会の縮図です。(略)
これでみっちり四、五年揉まれると、いい裁判官か弁護士になれるわけです。





法とは「一次ルールと二次ルールの結合である」

それで話を元に戻せば、こういう法律の原理原則や根源を扱う学問が法理学で、ロースクールの根幹になる学科です。その法理学という学問の、標準となるテキストが、ハートの「法の概念」という本なのですね。ですから、かなり社会的評価の高い本ではある。



ところが読んでみると、困ったことに、わからない。
わからないというのは、何が言いたいのか、わからないのです。(略)



私は読んで、また読んで、それでこれは、哲学者ヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の考え方と、同じである、それからヒントを得ているのではないかと思いついた。(略)


そう勝手に思って、それで「言語ゲームと社会理論」という本を書いたのです。
そのなかみを少しのべてみます。(略)



そこで、何を言おうとしているか、もう少し本を見て見ると、一次ルールはどんな社会にもあるもので、そのなかみは「責務を課すルール」だと書いてある。(略)



二次ルールについて

次に二次ルールがどういうものかというと、ハートの「法の概念」には、「承認の二次ルール、変更の二次ルール、裁定(adjudication)の二次ルールがある」と書いてあります。(略)


人間の記憶に左右されないで、法律はこれです、とみんなで認めることが出来るようになります。
別な方法としては、長老がいる。法律が何かわからなくなったら、一番長生きをしている、知恵のある長老のところにいって、その人に仲裁してもらう。(略)


何が法律かを論争してもきりがないわけですから、最後にはみんなが納得する、終着点が必要です。それが承認ということです。どんな社会にも承認はあるだろうと思います。


つぎに、「変更」というのは、法律を取り替える手続きのことです。(略)

それから「裁定のルール」というのは、裁判と考えてよいと思います。
こうしたものは、すべて二次的なものである、とハートは書いています。(略)
そこで私は考えて、彼が言いたいことを次のように取り出しました。」


〇 専門的な話は難しいので、どんどん省略してしまいます。