読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

人間にとって法とは何か

「2 イスラム法共同体

法学者と政治的支配者

法律を共有するムスリムの共同体を、ウンマといいます。こうしたイスラム法共同体をつくることで、地上の平和を実現します。
ウンマシャリーア(神の法、イスラム法)を共有して、同じ信仰、同じ礼拝、同じNGO活動(所得の一部を恵まれない人々のために提供するという喜捨)をします。



イスラム教徒の社会は世俗社会でありながら、そのまま宗教共同体です。キリスト教のような、教会という考え方がないのです。聖職者というのも存在しません。法学者は、世俗の職業なのです。(略)



カリフの代理人をスルタンと言います。現実には、あちこちのイスラム王国は、スルタンが支配していました。スルタンのそのまた代理人をアミールと言いますが、アミールの支配する王国もある。ウンマは地上にひとつのはずですが、たくさんの世俗的な王様が出てきます。




イスラム法共同体がなぜまとまるか

滅茶苦茶なようですが、そうでもない。イスラムの原則は、政治的な支配者、権力者は、必ず法学者を顧問に迎えて、イスラム法学者と相談しながら統治を行う。これが専制君主制と違うところです。法学者の権限や地位がとても高い。




ムスリムには、いろいろな派があります。まず大きく、シーア派スンニー派が分かれている。
スンニー派のなかにも、四つの大きなグループ(法学派)があります。これらの違いは、細かい法律のバージョンの違いです。「クルアーン」が同じですが、スンナ(第二法源)が違う。イジュマー(第三法源)が違う。(略)




ということで、ムスリムはバラバラになりそうですが、_ここはキリスト教徒と違うところですが_メッカ巡礼というものがあり、シーア派スンニー派も世界中のムスリムがメッカに集まります。イラン・イラク戦争のときにも、中断されなかった。(略)



大変お金がかかって無駄のように見えますが、でもイスラム世界がひとつにまとまっていくために、メッカ巡礼というのは、とても大事な仕組みです。(略)



キリスト教はこのように、宗教組織が弱いので、世俗社会をかえって発展させた。それに対してイスラム教は、宗教組織が強力すぎて、世俗社会が発展しにくいという面がある。」