読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

人間にとって法とは何か

「第11章 民主主義とリバタリアニズム

1リバタリアニウムとは何か

反権力としてのリバタリアニズム

次はリバタリアニズムの話をしましょう。
リバタリアニズムというのは新しい考え方で、ここ十年か二十年のうちに、アメリカを中心に出て来たものです。新保守主義と7言われることもありますが、福祉国家へのアンチテーゼとして出て来た、新しい潮流の考え方です。




福祉国家というのは、日本でも一九七〇年代から八〇年代、野党ががんばって、いろいろな福祉サービスを国がやるように要求し、実現しました。
アメリカでは、福祉国家は、たいへんに評判が悪いのです。福祉国家となるために、政府はいろいろな活動をしなくてはならない。政府がいろいろな活動をするためには、たくさん税金を集めなくてはならない、政府の職員も大勢に増えて、大きな政府になる、これはいいことだろうか、と彼らは言うわけです。


税金を集めるということは、民間からそれだけ資源が奪われることである。必要かどうかがわからないような、場合によっては過剰なサービスを国家が提供して、人々を甘やかしている。そう主張して反対しています。



この主張は、納税者の反乱として、有名になりました。
リバタリアニウムもそういう主張を持っていて、その点は保守主義と共通するのですが、彼らの考え方の根本は、反権力です。反権力といってもいわゆる左翼の反権力とは違い、もっと徹底していると言いますか、考え方がまったく違っています。



どういうときに、有無を言わせぬ国家権力が発揮されるか。fつうは戦争を思いうかべますが、先進国同士の戦争は考えられなくなりました。



そこでそれは、税金を集める時であると考える。税金とは、一般の人から見返りを約束しないで、強制的にお金を取り上げてしまうこと。これが権力の発動でなくてなんであろうか。こんなことは許されるはずはない。もちろん少しは許されるのですが、堂々といくらでも取ってやるぞ、というのはいくらなんでもやり過ぎだ。



権力に反対するなら、税金に反対すべきだ。徴税は人民を抑圧する権力の発動であり、人民の自由を制限することになるから、最小限に留めるべきだ。こんなふうに考えるわけです。」