「3 日本をとりまく国際法の問題
さてこのように法律を考えて行くと、日本は、とても難しい国際的な立場に立たされていると言えると思うのですが、その問題を、憲法問題、歴史問題、国際化の問題と三つに分けて論じたいと思います。
最初の憲法問題というのは、日本国憲法の内容と、国際常識とが乖離しているという点です。憲法は周知のように、戦争放棄をうたっています。政府の見解によると、個別自衛権はあり、だから自衛隊がある。しかし、集団自衛権は憲法の精神からして行使できない、と答弁しています。そのことと、国際社会の正義とが矛盾するわけです。
すると国連加盟国である日本国としても、クウェートの権益回復に努力をする最大限の義務があるはずです。そして多国籍軍が組織されました。多国籍軍がどういうものかというと、国連軍によく似たものではないかと思います。
国連憲章を読んでみると、国連は集団自衛権を正当な権利として認めていて、それを行使する形態として国連軍があるわけです。どうして集団自衛権を認めるかというと、個別自衛権しか認められないなら、ごく小さい国が、中くらいの国や大国が攻めて来た時に自力で対抗しなくてはならないことになります。それは無理だからですね。
小さい国は自衛のために、もっと大きい国と同盟を結んで、集団自衛権で対抗する必要があるわけです。ですから国連はそれを認めている。
日本は小さくもなければ大きくもない、まあ中くらいの国でしょう。島国ですから、個別自衛権だけでも、なんとかなるかもしれない(アメリカから言わせれば、アメリカが集団自衛権で日本を防衛しているから、日本は安全なのだ、ということになるのですが、このことは置いておきます)。
日本は集団自衛権を行使できない、そう政府も説明していましたし、国民もそう思っている。でもこれは、国連の考え方とは違っているのです。
そこへイラクが、クウェートを侵略した。日本はどうすればいいか。国内は大混乱になった。平和維持のために国連に貢献しなくてはいけない。でも戦争はできない。そこで半年か一年議論して、百三十億ドル出したわけですけれども、誰にも感謝されなかった。
いま、今度はイラク戦争が起ころうとしているわけですが(本書のもとになる講演は二〇〇二年十一月に行われた)、十年経ったのに議論はちっとも進んでいないから、やはり同じようなことになる。政府は早手回しに、これを支持すると言っていますが、国内の議論が進んでいないということは、否定のしようもない。
以上が憲法問題の現状です。」
〇 不当な侵略を受けた「小さな国」を国際社会が「集団」で助ける。
自国のことではないから、と知らんふりしていたら、と考えると、
絶望的な気持ちになります。人間としてどうなのか、と思います。
今も、あのISを放っておいていいはずがない、と思います。
ですから、集団で戦う必要がある場合は間違いなくある、と私も思います。
その時、日本はどうするのか、とこの橋爪氏は言っているのだと思います。
ですから、問題があることはわかります。
でも…なのです。
その「大儀」はおそらく、このような場合を想定しているから、ということになるのでしょう。
いわゆる「タテマエ」です。
建前で、憲法を変えて、その」ホンネ」は戦争の混乱を想定する中で自分たちに
都合の良い国にしていく、ということではないか、という不信感が消えないのです。
「日本会議」の人びとがスピーチしている映像を見ると、「国民主権、基本的人権、平和主義を堅持するなどと言っていてはいけない。この三つを無くさなければ、自主憲法にはならない」などと言っているのです。その同じ席に安倍総理も座っているのです。
政治家に対するこの種の不安が消えないので、橋爪氏が言うような真っ当な論理も、そのまままっすぐに受け止められないということになり、いつも、「議論が出来ない状態」になります。
あらゆることが、そうなってしまいます。
嘘つきで、ホネヌキが得意で、大本営発表のニセデータばかり流す政治家のいうことなど、何も信じられません。