読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

人間にとって法とは何か あとがき

「明治の昔から、法律は、法学部に閉じ込められてきた。ごく少数の専門家の手に握られてきた。ふつうの人びとには馴染みにくいものだった。
このことが、日本の社会を、どれほどゆがめてきたことだろう。



法律は、人間と人間の在るべき関係を規定するもの。市民社会の基礎にあたる。
そこでは、いま現に通用している法律の条文をこと細かに解釈する「法律学」よりも、法律とはそもそもどういう原則から成立しているのかを扱う「法学」のほうが、はるかに大事である。



そうした法律の原則は、法学部の枠には必ずしも収まりきらない。哲学や歴史や、経済学や社会学や、宗教や人類学や、といった広い文脈に、視野を拡げる必要がある。



本書は、そうした広い文脈から法律をとらえ直そうとした、ささやかな試みである。
ところで、ロースクール法科大学院)を新設して、法律家の養成を進めようという準備がいま進んでいる。
これは、歓迎すべき事ではないかと思う。




これまでのように、法学部で法律を勉強し、司法試験を目指すというやり方では、勉強の幅が狭すぎたし、合格する人数も少なすぎた。理工系など様々な学部から、多様な人材がロースクールに進み、もっと社会常識を踏まえて、みっちり生きた法律の勉強をするのはよいことだ。



カリキュラムを、ぜひ大胆に改革してもらいたい。人文学・社会科学や、理工学の常識を踏まえ、徹底的な討議(ディスカッション)を通じてリーガル・ンマインドを鍛える教育を行なってもらいたい。



人数をうんと増やすことも大切だ。日本の裁判は、時間がかかりすぎだ。法律家の人数を増やし、海底のやり方も工夫して、速やかに判決を下すこと。法律に対する信頼を取り戻す第一歩である。



最近、法律をテーマにしたTV番組が人気を集めるようになった。法律を身近なものに取り戻したいという、人々の願望が高まっている。なるべく多くの若い人々が、法律に関心をもち、法について考え、法律家を志望してくれればと思う。(略)


二〇〇三年八月    著者記す               」


〇 …ということで、この本は終わっています。
ひとことで言えば、読みながらただただ虚しい気持ちになりました。
理念やポリシーのようなものが語られていて、その言葉を聞いているかぎりにおいては、真っ当な世界や信頼できるシステムが見える。

でも、現実には、(何度も繰り返すように)総理大臣が大っぴらに憲法否定の言説を繰り返している。ここで、橋爪氏がいっていることが本当だとすれば、直ちに憲法違反として、追及されなければならない。

権力者が自らを縛る憲法を否定し、強引に変えようとしている。
クーデターにも等しい言動をしている。

それなのに、私たちの国の「有力者」たちは、その安倍氏を支持しています。
「社会は法の支配、すなわち法による秩序のもとにある」と言われています。
でも、全然そうなっていません。


為政者たちは、その法をホネヌキにし、法とは違う論理でことを進めようとしているのがはっきり見えます。


橋爪氏は、

「法律とはそもそもどういう原則から成立しているのかを扱う「法学」のほうが、はるかに大事である。
そうした法律の原則は、法学部の枠には必ずしも収まりきらない。哲学や歴史や、経済学や社会学や、宗教や人類学や、といった広い文脈に、視野を拡げる必要がある」
と言っています。


そこが問題なのだろうと思いました。


これで、「人間にとって法とは何か」のメモを終わります。