読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中枢の崩壊

「役人の既得権を拡大させた「基本方針」

実名で政府の公務員制度改革案を批判すれば、どのような仕打ちが待っているか、私にもある程度は想像出来た。(略)


二〇一〇年六月、国家公務員の「退職管理基本方針」(総務省案)なるものが発表された。
その内容が実に噴飯ものだった。天下り根絶に伴う処遇ポスト確保のための処置としていたが、実は、高齢官僚が望む年功序列の昇進・昇給システムと、天下りに既得権維持策でしかなかったからだ。(略)



「基本方針」では、「天下りのあっせんを根絶し」と従来の方針を謳っている。だが、内容を検討すると、謳い文句とは裏腹に、事実上の天下りを容易にする方法と、出世コースから外れた官僚の処遇ポストが用意されることになっている。(略)


中央官庁では六〇歳の定年を迎える前に、各省庁の大臣官房が中心となり、再就職先を斡旋してきたが、安倍政権での国家公務員法改正で、省庁による斡旋行為が禁止された。(略)これは極めて出とうな改正だった。



ところが菅政権は、国家公務員法で禁じられているのは定年前の「勧奨退職」に伴う天下り斡旋であり、l中高年の現役職員が公務員の身分を維持したまま出向したり派遣されるのは、これに当たらないとした。その結果、天下りは有名無化するどころか、これまで以上の官民癒着につながる恐れさえある。(略)



たとえば、経産省が規制改革の議論を進めている最中に、受け入れ先の社長が事務次官に時候の挨拶にやってきて、官房長が同席したとしよう。
事務次官に社長が白々しくも礼をいう。
「お宅から出していただいた〇✖さん。たいへんよくやってくれています」
そばで聞いていた官房長はその途端ドキッとして、「いや、こちらのほうこそ、お礼申し上げないと。たいへん良くして頂いているそうで」とお愛想をいう。



官房長の心の中を見透かしたように社長が話し始める。
「最近、世の中が騒がしいですなあ。お宅の審議会では規制改革に関して議論が進んでいるようで。(略)事業にもかなり影響するという報告もありまして。ただでさえ、厳しいご時世なのに、たいへんですわ」



お宅の人間の面倒を見て、能力の割に高い給料を払っているのに、規制緩和などやられたら、何のために受け入れてやったのか分らないと、言外に匂わせる。
こういう会話が交わされると、規制改革の矛先が一気に鈍る。




高齢の官僚に年収千数百万円を保障

序章で触れた東電と規制官庁である経産省、その外局の資源エネルギー庁原子力安全・保安院との関係はその典型である。
「想定外」といわれた津波による全電源の機能停止。実は、そうした不安は以前から指摘されていた。



そのような指摘をいちいちまともに取り上げて規制を強化しようとすれば、東電はじめ天下りを送り込んでいる電力各社との関係が悪くなる。世論の厳しい批判が出て初めて、東電がやむを得ないと思うまでは、規制強化は先送りしようということになってしまったのだろう。



これは意図的に行われたというより、官僚の本能として無意識のうちに行われたのかも知れない。従って当事者たちは、まったく罪の意識がなかった、という推測も十分に成り立つ。それくらい根が深い問題なのだ。



しかも、何代にもわたって天下りを送り込んでいる場合は、前述したような現実のやり取りが行われなくても、阿吽の呼吸で意思疎通が行われているのが普通だ。(略)



「基本方針」にはもう一つ大きな問題点がある。(略)独法の天下り役員ポストについては二〇〇九年秋から公募が義務付けられていたが、現役出向で就く場合は、公募悪手も良いと改悪された。(略)どう考えても、政治主導を隠れ蓑とした官僚の利権拡大としか思えないからだ。




第三の問題として高位の「専門スタッフ職」の新設。(略)この処遇によって、高齢のキャリア官僚は幹部並みの年収千数百万円が保障されることになると予想される。これまた官僚の既得権拡大と見られても仕方がない。」