読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中枢の崩壊


「インフラビジネスはなぜ危ないのか

霞が関民主党政権が一体となって熱心に取り組んだ「パッケージ型インフラ海外展開」も、適切な政策かどうか、怪しい限りである。(略)


まず第一に、インフラ事業の海外進出は一〇年から二〇年という息の長い取り組みが必要だ。国家戦略としてこうした取り組みを継続的に進めて行けるような体制が政府にあるのかどうか。つまり、組織力の勝負で勝てるのか。これまでの経験では、答えはNOだ。(略)



たとえばイランで日の丸油田開発を目指したIJPC(イラン・ジャパン石油化学)事業。三井物産を核とした三井グループが、イランの原油確保を目指して一九七一年からスタートさせ、円借款貿易保険も用いた国家的プロジェクトとして進められたが、一八年の歳月費やしても油田はできず、イラン革命、イラン・イラク戦争で撤退を余儀なくされ、厖大な損害をこうむった。政府も莫大な損害を出した。




IJPCに取り組んでいた時、企業も国も最大級のプロジェクトだとみな気分が高揚していたが、見事に失敗に終わってしまった。このとき、イラン・イラク戦争に関する情報入手やその後の意思決定でも、日本はもたついて被害を拡大させた。つまりこれは、日本は組織力という点で決して秀でていないという一例である。(略)



第二に、組織力の話とも関連するが、日本政府が前に出ることで、相手との交渉で有利に立てるかということがある。途上国といっても、独立や国家統一のために何回も戦争や内戦を経験し、生きるか死ぬかの困難な外交交渉を乗り越えて来た国々が相手である。この海千山千の国々を相手に、日本政府がしたたかな交渉をできるかどうか。




過去の例を振り返れば答えは簡単だ。「否」である。(略)



これは日本だけが直面している問題ではない。中国は、二〇〇二年に上海リニアモーターカーを開通させ、上海万博が開かれた二〇一〇年、杭州にまで延長した。上海リニアの入札はフランス、ドイツ、日本で争われ、最終的にはドイツに決まり、工事が行われ、延長区間も引き続き、ドイツの企業が請け負うことになっていた。



ところが、ドイツのリニア工場に中国人技術者が忍び込む事件が起き、その後、中国政府は延長リニアの「一〇パーセントはドイツに発注するが、後はすべて自国でやるから技術移転をしろ。その条件を呑まなければ発注しない」と要求していた。そして実際、独自で開発したリニアの実験を開始、国産リニアを完成させてしまった。




天下り法人がドブに捨てた二千数百億円

第三の問題として、政府が金儲けの目利きが出来るかどうかという問題がある。とりわけ、二〇年から三〇年にも及ぶビジネスの先を見通すことは極めて難しい。だから民間だけでは対応できないというのだが、では、政府が入ることでその確実性が増すのか。(略)



それに比べて日本はどうか。ビジネスに関する目利き能力という点では、日本政府はきりいって幼稚園以下である。
NTTの株式売却収入などを原資にして、三〇〇〇億円近くの資金を、経産省ベンチャー支援と称してあまたの企業に出資したことがある。結果がどうなったか_。




還って来たのはわずかに五パーセント。なんと二千数百億円がドブに捨てられたも同然、大損失を出したのである。運営したの天下り法人。それに対して誰一人責任を取っていない。



そもそも、日本政府がやったインフラ整備の結果を見てみるが良い。車より熊の方が多いといわれた地方の道路、空港、港湾、至る所で失敗の山。成功例は失敗に比べれば一〇分の一以下だろう。インフラについては政府の競争力は極めて低いのである。とにかく、政府が出て行くと金儲けの確実性が増すという考えは捨てた方が良い。(略)


たとえば原発を売り込む場合、三〇年保証などといった条件がいっぱいついてくる。できあがって納入しても、事故が起これば一発で儲けは吹っ飛ぶ。これは東電の福島原発の事故を見ても一目瞭然だ。(略)」


〇 インフラと言って、一番大事なのは、国民が日常生活を「健康で文化的に」することではないのか…。それほどの「ドブに捨てるお金」があるのなら、何故、保育園や子どもの教育の方にそのお金が使われないのか、すごく不思議です。

人並みの暮らしが出来る保育士さんがたくさんいて、ブラックな職場などと言われない環境の教師もたくさんいて、やる気のある若者が、借金まみれにならなくても済む教育環境、まっとうな賃金が得られる職場があれば、結婚も出来るし、子育ても出来るのに。
子どもたちも元気に育って、また、しっかり国を支えてくれるようになるのに。