読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中枢の崩壊

「役人がインフラビジネスで得る余禄

最後に、パッケージ型インフラ整備が生失敗に終わる可能性を高める最大の要因について指摘しよう。これまで述べたところから概ね推測がつくと思うが、役人が「パッケージ型インフラセールス」に執心するのは、おいしい汁が吸える可能性があるからだ。



大型プロジェクトには、政治家も役人も企業かも蜜に集まる蟻のように寄って来る。
たとえば、原発を世界に売り込むにあたって、官民出資の投資ファンド、すなわち産業革新機構が出資して、国際原子力発電なる新会社を設立した



今はさすがに天下りは行っていないが、そのうち、この会社は役人の天下り機関になる可能性がある。(略)




受注すれば大きなビジネスになるので、関係企業の社長は、大臣以下、事務次官、局長のところに日参して、「お願いします」とペコペコする。(略)
それがインフラビジネスなら、続々と社長が集まってきて、しかもみな頭を下げて帰る。役人にとってこんな気もちの良いことはない。



企業から見れば、自分たちが負うべき数百億円あるいは数千億円単位の巨大なリスクを国民に押し付けることが出来るのであるから、頭を下げることなど安いものだ。(略)



ここで、企業が頭を下げるということは、役人の発想では、天下りを送り込める可能性が高いということ。(略)




役人は、いま損するわけではないものには、あまり考えずにどんどんおカネを出す。役人にとって、仕事は予算を取って使うこと。そこで、ピリオドだ。その結果には関心がない。投資したキャッシュがすべてなくなっても、キャッシュを追加するわけではない。つまり新たな予算とは関係ないので、自分の仕事とは関係ないというのが、役人の感覚なのだ。



役人の世界では成果を問われない。役人は投資したカネがどのような成果につながったのか、ということには、まるで関心がないのだ。先ほど述べたNTTの株式売却益を二千数百億円なくしてしまっても何の問題にもならず、誰も責任を取らなかったのがいい例である。




わざわざ借金して投資する産業革新機構の愚

産業革新機構も役人的な発想で出来上がった政府系ファンドだ。同機構は、先端技術や特許の事業化の支援などを目的として、産業活力再生特別措置法に基づき、二〇〇九年七月に設置された。



投資対象は、先端技術による新事業、有望なベンチャー企業、国際競争力の強化につながる大企業の事業再編などとしている。(略)



いずれにしても、わざわざ国が借金しておカネを運用しようとしているという点で、普通のソブリンファンドとは違う。そもそもこれだけ財政状況が悪化しているときに、借金をしてまで投資をするという発想自体が変だ。



結局、無駄のオンパレードとなった昔の財政投融資のプロジェクトと似ている。
現在は財政状況がより悪化しているからもっとたちが悪い。借金返済で首が回らなくなったので、一発逆転、大穴狙いで万馬券の夢を追うというのに近い。(略)



従って、よほど高いリターンでないと、投資する人はいない。しかも、どかんと投資する人は皆無に近い。そこで多くの人から少しずつ出資させてリスクの分散をはかる。(略)
_これはよく考えれば非常に危ない話である。民間が投資しないのは、プロジェクトの成功確率が低いとか、そもそもまゆつばだとか、なんらかの理由があるからだ。(略)



役人の政策が浅はかになるのは、利益の誘導もさることながら、現場をほとんど知らないからだ。たとえば経産省の官僚はビジネスマンとして得意先と丁々発止の交渉をしたこともなければ、実体経済に詳しいわけでもない。


審議会にかけて検討してもらい、まとめるといっても、しょせん耳学問だ。利益誘導を抜きにしても、実情に即した政策を作るだけの経験も知識もない。そういう意味でも、回転ドア方式で、霞が関に民間の血を入れる必要がある。」