読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中枢の崩壊

〇 この後も、「起死回生の策」として、古賀さんは、さまざまな策を提言しています。

「農業生産額は先進国で二位」「「逆農地解放」を断行せよ」「農業にもプラスになるFTAとTPP] 「中国人経営者の警句」「富裕層を対象とした高級病院があれば」「観光は未来のリーディング産業」「人口より多い観光客が訪れるフランスは」「「壊す公共事業」「作らない公共事業」」「日本を変えるのは総理のリーダーシップだけ」というような小見出しが並んでいます。

私は基本的に、古賀さんは信頼できる人だと感じたので、この本も手に取りました。
でも、何度も言いますが、人間はみなそれほど完ぺきではないと思います。どこかに素晴らしく優秀で立派で完全な人がいて、政治をやってくれる…と期待することなど出来ない。

そんな前提で政治家を見る時、あの人もダメ、この人もダメ、となり、結局力づくで汚い手を使っても強引に居座るような「リーダーシップ」を発揮する人が残ってしまうのではないか、と思います。

民主党は頼りなかったし経験不足だし、しかも内部に「ほぼ自民党的」な人々をかかえていたので、どうしようもなかったと思います。

でも、本気で現在の問題の多い日本の政治を変えようとしていた人もいたのは間違いないと思うのです。

少なくとも誠実さを持っている人々に政治をやってもらいたい。もっと言えば、誠実そうに見せようとする人でもいい。誠実が本来は大事なことだとわかっている人と言ってもいい。平然と汚い手を使う人、隠蔽や改竄で、うまく国民を騙そうとするような人々に政治を任せておきたくない。


最後に、並んでいる小見出しの中から、「「平成の身分制度」撤廃」と「「死亡時清算方式」と年金の失業保険化で」「大連立は是か非か」をメモして、終わりたいと思います。


「「平成の身分制度」撤廃

いま、日本人は「一億総リスク恐怖症」に陥っている。バブル崩壊から始まったその傾向は、特にリーマン・ショック以降、顕著になった。(略)企業部門には二〇〇兆円を超える現預金が唸っているのに、投資が怖い。個人金融資産も未だに預金が多く、その預金で銀行は国債を買っている。(略)



海外留学生も年々減少の一途を辿り、公務員や大企業志望の傾向はさらに強まった。子供に「将来の夢は?」と聞いたら、「正社員」と返って来たという笑えない話もあるくらいだ。



リスクを取らず、いまある生活を防衛することだけを考えている日本人が多くなった。(略)あたかも、リスク回避という官僚の習性がウイルスとなって霞が関からばら撒かれ、日本人全体に感染したかのような感がある。



だが、リスクを恐れてチャレンジしなければ、明日は拓けない。逆に言えば、リスクを怖がらなければ活路は開ける。(略)



政治かも役人も経営者も労働者も、日本人全体で、発想と価値観のコペルニクス的転回が必要だ。(略)



私が考えているのは、まず、「平成の身分制度」の廃止である。いまの日本には、努力なしに手に入れた地位や身分がいっぱいある。たとえば農家の多くは、親から田畑を引き継ぎ、農業をやっている。中小企業経営者も、ベンチャーはあるにしても、大半の経営者が親の会社を受け継いでいる。



たまたま農家や中小企業の家に生まれて得た身分でしかない。他方、中小企業の労働者は、普通のサラリーマンとして大して大きな保護は与えられない。


ある意味、高齢者もこの範疇に入る。高齢者は努力してなるものではない。七〇年生きられれば、誰でも高齢者になれる。


公務員もそうだ。公務員になる時に試験はあるが、一度なれば、民間と違い、何もしなくても六〇歳まで安泰。しかも、年功序列で給料も毎年上がり、役職定年もなく、給与がある年齢から下がるという仕組みもない。(略)



しかも、キャリア官僚は退職後も「天下り」「渡り」で七〇歳ぐらいまで生活保障される。これは職業ではなく「身分」だろう。
いまの政策では、こうした努力なしにたまたま得られた身分の人に手厚い保護を与え、守っている。これは一種の「身分制度」である。



保護の強さの順で言えば、「官・農・高(高齢者)・小(中小企業経営者)」とも言えるのではないか。
だから、「平成の身分制度」撤廃で、たとえば、満足に経営できていない人にはやめてもらう。



農家にも失業保険と先に書いたが、私は中小企業の経営者にも失業保険がかけられるにしたらいいのではないか、と思っている。
中小企業経営者は事業を止めると、完全に収入の道が途絶えるので、赤字でも会社にしがみつく。その結果、見切りどきを誤り、最後は悲惨な結末を迎える経営者も少なくない。



半年から一年、失業保険をもらえて、これは差し押さえ禁止としたらいい。これで当面は食いつなげるとなれば、本当に危なくなる前に見切りを付けられる。日本の産業構造転換も早く進む。



こうした対策を講じながら、改めて一人ひとりの境遇に目をやり、本当にかわいそうな人だけを守る。(略)



出来の悪い企業や農家も含めて一律に守る産業政策、農業政策を一切やめる。もちろん、その前に出来の悪い公務員をリストラし、出世できないようにし、競争させて公務員の効率を上げる。



無駄な産業政策がなくなれば公務員もかなり減らせる。二重の政策効果で人件費も浮く。これらを集めれば、数兆円のおカネが浮く。そのカネを全部使わなくても、農業訓練や教育に向けた予算を相当手厚くすることができる。



仕事をしていない人には、新たに台頭してきた産業に再就職できるよう、技術と知識を身につけさせる。この部分が実はもっとも重要だ。
しかし、いまの厚労省のやっていることは極めて効率が悪く、アリバイ作りに終わっている。



成果主義を徹底して、公務員に結果を出させる仕組みに変える。ハローワークの民営化なども含め民間の活力も導入する。こうすれば、やっと、みな安心してチャレンジいる。



また、日本の大学のレベルは国際的に見ると相当に低い。これからの若者は、日本の企業に就職する場合でも、海外の若者との競争になってくる。若者にはそういう環境でも生きて行けるだけのものを身につけるために、より高い水準の教育を行う。そのためには、文部科学省の管理する教育行政から抜本的転換をしなければならない。



このようにして、予算を「守る」から「変える」「攻める」に大転換して初めて、日本経済が浮上する可能性が出てくる。逆に、これができなければ、日本は確実に沈んでいくだろう。」