読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

忘れられた巨人


〇 カズオ・イシグロ著「忘れられた巨人」を読んでいます。先日、「日の名残り」を読んだ時、数日かけて、少しずつ読んだのですが、その物語の中に「戻る」のがとても楽しみになっている自分に気づきました。

それ以来、その感覚が忘れられず、もう一度、とカズオ・イシグロの本を読み始めました。

以前と物語が違うし、今度はそうはならないかも、と思ったのですが、
期待は裏切られず、やはり今回も、「その中に戻る」のを楽しみにしながら、
日々の雑事をこなしています。

私が「その世界」を楽しみにしていた本と言えば、「赤毛のアン」と「風と共に去りぬ」です。どちらも少女小説っぽい世界が自分にあっていたのだろう、と思いました。

ここに来て、こんな風に「その世界」を楽しみにする小説に出会えるとは思いませんでした。嬉しいです。

日の名残りも今の忘れられた巨人も、ミステリーではないのに、先の展開が気になって読まずにいられなくなります。その流れに気持ちが運ばれてしまう「水流」のようなものを感じます。


そしてもう一つ、とても「善良な空気」を感じます。
これは、「赤毛のアン」にも「風と共に去りぬ」にもあったものです。私はその空気を求めて、あの世界に逃げ込んでいた時期がありました。

その空気がカズオ・イシグロの本にもあって、私はそれがすごくうれしいのだと思います。まだ、読み始めたばかりなのですが、そう感じながら読んでいます。


そんな「善良な空気」という言葉を発して思ったことがあります。

先日読んだ内田樹著「こんな日本でよかったね」の中にあった言葉を抜粋します。


「だから、「私の着任以前の何年も前からルール違反が常習化しており、私も「そういうものだ」と思っておりました」というようなエクスキュースを口走る管理職が出て来たことがシステムの壊死が始まっていた証拠である


〇「赤信号みんなで渡ればこわくない」をギャグとして笑っていた頃には、まだちゃんとあった「善悪の規準」が、「敢えて語らないのが粋」、「上から目線で偉そうに説教しないでほしい」の風に吹き飛ばされ、今やどんどん曖昧になり、「ルール違反が常習化し、私もそういうものだと思っておりました」という人が増えてしまったのか…と思いました。