それ以来、その感覚が忘れられず、もう一度、とカズオ・イシグロの本を読み始めました。
以前と物語が違うし、今度はそうはならないかも、と思ったのですが、
期待は裏切られず、やはり今回も、「その中に戻る」のを楽しみにしながら、
日々の雑事をこなしています。
ここに来て、こんな風に「その世界」を楽しみにする小説に出会えるとは思いませんでした。嬉しいです。
そしてもう一つ、とても「善良な空気」を感じます。
その空気がカズオ・イシグロの本にもあって、私はそれがすごくうれしいのだと思います。まだ、読み始めたばかりなのですが、そう感じながら読んでいます。
そんな「善良な空気」という言葉を発して思ったことがあります。
先日読んだ内田樹著「こんな日本でよかったね」の中にあった言葉を抜粋します。
「だから、「私の着任以前の何年も前からルール違反が常習化しており、私も「そういうものだ」と思っておりました」というようなエクスキュースを口走る管理職が出て来たことがシステムの壊死が始まっていた証拠である」
〇「赤信号みんなで渡ればこわくない」をギャグとして笑っていた頃には、まだちゃんとあった「善悪の規準」が、「敢えて語らないのが粋」、「上から目線で偉そうに説教しないでほしい」の風に吹き飛ばされ、今やどんどん曖昧になり、「ルール違反が常習化し、私もそういうものだと思っておりました」という人が増えてしまったのか…と思いました。