読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

一下級将校の見た帝国陸軍

〇最近、何度も思い出す場面があります。「一下級将校の見た帝国陸軍」の中で、
山本氏の代わりに先発の斬り込み隊となった隊長についての描写です。

「彼は、背が高くやや猫背、軍刀を日本刀のようにベルトに差し込み、つるのこわれた眼鏡細紐で耳にかけ、巻脚絆に地下足袋といういで立ちだった。



その服装特に眼鏡が現代離れしており、私が思わず「大久保彦左ですな」というと、彼は、げっそりこけた土色の頬をゆがめるようにして、笑って言った、「あの時代の戦法ですからな、斬り込みは」。



言い終わると軽く私の敬礼にこたえ、何一つ特別な言葉を残さず、九人の部下とともに出発した。そしてその夜、隘路のビタグ側の入口付近の竹林で射殺された。



去って行く後ろ姿は、馴れた道を急ぐ人のように無造作だった。ああいう場所に行くとき、人は不思議にさりげなく行く。そして、さりげなく行く者だけが、本当に行く。だがその人が何も言わなくても、去って行くその背中が何かを語っていた。」

〇 物語ではなく、実在の人だったということで、何度も思い出すのだと思います。