読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

安倍官邸とテレビ

「第四章 第二次安倍政権によるメディア介入

二〇一二年一二月の第四六回総選挙で自民党民主党から政権を奪還し、第二次安倍政権がスタートした。(略)



本章では、第二次政権スタートからの三年間を振り返り、メディア幹部との会食、登場メディアの選別、NHKへの介入、総選挙報道への注文、自民党本部へのテレビ朝日NHKの呼びつけ、自民党「文化芸術懇話会」での”妄言”問題、二分化されたメディア、BPOとの対立などについて解説する。


(1)メディアの選別

メディア幹部と頻繁に会食

まず、多くなったのがメディア幹部との会食だ。
一一四、一一五ページの【表6】は、しんぶん赤旗が二〇一四年一二月三〇日に「安倍政権のメディア戦略、幹部とは会食 現場には恫喝 政権べったりの社を選別 突出する「読売」、フジテレビ」と報じた記事での分析だ。


同記事は、「総選挙投票2日後の16日、「自公圧勝」報道の嵐の中、首相が全国紙やテレビ局の解説委員・編集委員らと会食したことが話題となりました。この会食にとどまらず、この2年間、首相とメディア幹部との会食が重ねられてきました。そのなかで鮮明になっているのが、首相によるメディアの選別です。


2年間で見ると、突出しているのが、「読売」の渡辺(渡邊)恒雄会長の8回、フジテレビの日枝久会長の7回。それにつづくのが、「産経」の清原武彦会長の4回、日本テレビの大久保好男社長の4回などです」と解説している。



世界的にみても、政治のトップがメディア幹部らとこれだけ頻繁に会食する例は、寡聞にして聞いたことがない。百歩譲って、取材する記者であれば、最高権力者と会食することで取材の幅を拡げ、国民の知る権利に奉仕する報道を実施することは可能であろう。しかし経営トップとなれば、そうはいかない。経営者の最大の関心は、自社グループの利益拡大である。



渡邉恒雄読売新聞グループ本社会長が読売新聞の社長に就任したのが一九九一年。既に四半世紀を経ている。同様に日枝久・フジテレビ会長がフジテレビの社長となったのは一九八八年。こちらも四半世紀を超える支配体制を築いている。このような経営者が頻繁に首相と会食をしているのを尻目に、現場の記者が「権力の監視」を行なうことが果たして可能だろうか?



不可解なNHKニュース

二〇一五年七月二一日、NHKニュースは「安保法制、来週から衆議院で審議入り」と報じた。この中で隠し撮り風の映像で伝えたのが、車から降りてフジテレビに入る安倍首相と、満面の笑みを浮かべて出迎える日枝久・フジテレビ会長、そして、局を去る安倍首相をこれまた満面の笑みで見送る日枝会長の姿であった。



前日の七月二〇日、安倍首相はフジテレビ「みんなのニュース」(一五時五〇分~一九時)に一時間余りにわたり生出演し、安保法制の必要性を語っていた。そのスタジオ入りの前の映像である。



だがNHKニュースは、首相が番組に出演して語ったことを紹介するわけではなく、総理大臣とフジテレビの最高権力者とのツーショットを映像で紹介しただけである。また、この映像には日枝会長を説明するテロップはなく、一般の視聴者には、安倍首相以外の人物は誰なのか分からないものだった。



この不可解なニュース映像を私に教えてくれたのは、読売新聞の記者だった。「まるで、安倍内閣を支持しているのはNHKだけじゃない、「フジテレビなんて会長自ら出迎えているぞ、というメッセージだ。それを読売新聞が言えた義理ではないけれど」と自嘲しながら教えてくれたのである。




早速、NHKニュースのサイト(放送後一週間は輜重可能)で映像を確認した私は、旧知のNHK職員に{安倍政権とン蜜月なのはNHKだけではない、と玄人向けにアリバイ証明をしているような映像だった」と率直な感想を伝えた。



NHKの籾井会長と安倍政権との”親密ぶり”が盛んに報じられていた時期だけに、そう感じたのである。旧知の職員は、私の感想に対して肯定も否定もせず、「籾井会長の就任以来、幹部職員の”ヒラメ化”(上の意向ばかりを気にすること)が進んでいる。権力監視というジャーナリズムの基本が欠落したニュースが増えているのは我々も実感している」と答えた。(略)」