読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 上   第1章 唯一生き延びた人類種

ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」をヤフーブログからこちらへ移します。

2018年1月頃に下巻を読み、5月になって上巻を読みました。

図書館に予約して借りて読んだので、そのようなことになりました。

繋がりがスムーズになるように、移したいと思います。

 

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〇「タイガーと呼ばれた子」が途中なのですが、「サピエンス全史 上」の予約の順番がまわってきたので、こちらから先に読み終えたいと思います。

「サピエンス全史 下巻」を先に読み、上巻をその後で読むという、変則的な読み方になってしまいました。


「第1章 唯一生き延びた人類種

人類は、歴史が始まるはるか以前から存在していた。現生人類と非常によく似た動物が初めて姿を現したのは、およそ250万年前のことだった。だが、数え切れぬほどの世代にわたって、彼らは生息環境を共にする多種多様な生き物の中で突出することはなかった。(略)


先史時代の人類について何をおいても承知しておくべきなのは、彼らが取るに足りない動物にすぎず、環境に与える影響は微々たるもので、ゴリラやホタルやクラゲと大差なかった点だ。」


「なかでも、チンパンジーが一番近い。わずか600万年前、ある一頭の類人猿のメスに、二頭の娘がいた。そして、一頭はあらゆるチンパンジーの祖先となり、もう一頭が私たちの祖先となった。」

 

「<不面目な秘密>
ホモ・サピエンスは、さらに不穏な秘密を隠してきた。私たちには野蛮ないとこたちが大勢いるばかりでなく、かつては多くの兄弟姉妹もいたのだ。
私たちは自分たちが唯一の人類だとばかり思っている。それは実際、過去一万三千年間に存在していた人類種が唯一私たちだけだったからだ。

とはいえ、「人類」という言葉の本当の意味は、「ホモ属に属する動物」であり、以前はホモ・サピエンス以外にも、この属に入る種は他に数多くあった。そのうえ、本書の最終章で見るように、そう遠くない将来、私たちは再び、サピエンスでない人類と競い合う羽目になるかもしれない。この点をはっきりさせるために、私はホモ・サピエンスという種の生き物(現生人類)を指す時に、「サピエンス」という言葉をしばしば使い、ホモ属の生き物すべてを指す時に「人類」という用語を使うことにする。」


「ヨーロッパとアジア西部の人類は、ホモ・ネアンデルターレンシス(「ネアンデル谷(タール)出身のヒト」の意)で、一般にはたんに「ネアンデルタール人」と呼ばれている。(略)


アジアのもっと東側に住んでいたのがホモ・エレクトス(「直立したヒト」の意)で、そこで200万年近く生き延びた。これほど長く存在した人類種は他になく、この記録は私たちの種にさえ破れそうにない。ホモ・サピエンスは今から1000年後にまだ生きているかどうかすら怪しいのだから、200万年も生き延びることなど望むべくもない。」


「じつは、約200万年前から一万年前ごろまで、この世界にはいくつかの人類種が同時に存在していたのだ。(略)10万年前の地球には、少なくとも六つの異なるヒトの種が暮らしていた。」

 

「<思考力の代償>
じつのところ、大きな脳は、身体に大きな消費を強いる。」

 

「今日では、私たちの大きな脳は十分元が取れる。(略)だが、自動車も銃も最近の発明だ。人類の神経ネットワークは200万年以上にわたって成長に成長を重ねたが、燧石のナイフと尖った棒以外に見るべき成果をほとんど残さなかった。


それでは、その200万年もの年月に、いったい何が人類の巨大な脳の進化を推し進めたのか?正直なところ、その答えはわからない。」

 

「女性はさらに代償が大きかった。直立歩行するには腰回りを細める必要があったので、産道が狭まった_よりによって、赤ん坊の頭がしだいに大きくなっている時に。


女性は出産にあたって命の危険にさらされる羽目になった。(略)


そして実際、他の動物と比べて人間は、生命の維持に必要なシステムの多くが未発達な、未熟な段階で生まれる。」


「この事実は、人類の傑出した社会的能力と独特な社会的問題の両方をもたらす大きな要因となった。自活できない子どもを連れている母親が、子供と自分を養うだけの食べ物を一人で採集することはほぼ無理だった。


子育ては、家族や周囲の人の手助けをたえず必要とした。(略)
したがって、進化は強い社会的絆を結べる者を優遇した。そのうえ、人間は未熟な状態で生まれてくるので、他のどんな動物にも望めないほど、教育し、社会生活に順応させることができる。(略)


だから今日、私たちは子どもをキリスト教徒にも仏教徒にもできるし、資本主義者にも社会主義者にも仕立てられるし、戦争を好むようにも平和を愛するようにも育てられる。」


「初期の石器のごく一般的な用途の一つは、骨を割って中の骨髄をすすれるようにすることだった。これこそ私たちのもともとのニッチ(生態的地位)だったと考える研究者もいる。」

 

「それに比べると、サピエンスはむしろ、政情不安定な弱小国の独裁者のようなものだ。私たちはつい最近までサバンナの負け組の一員だったため、自分の位置についての恐れと不安でいっぱいで、そのためなおさら残忍で危険な存在となっている。


多数の死傷者を出す戦争から生態系の大惨事に至るまで、歴史上の多くの災難は、このあまりに性急な飛躍の産物なのだ。」


「<調理をする動物>
約三十万年前には、ホモ・エレクトスネアンデルタール人と、ホモ・サピエンスの祖先が、日常的に火を使っていた。」

 

「調理をするようになったおかげで、人類は前よりも多くの種類の食物を食べたり、食事にかける時間を減らしたりでき、小さな歯と短い腸で事足りるようになった。調理が始まったことと、人類の腸が短くなり、脳が大きくなったことの間には直接のつながりがあると考える学者もいる。」


「これが一番重要なのだが、火の力は、人体の形状や構造、強さによって制限されてはいなかった。たった一人の女性でも、火打ち石か火起こし棒があれば、わずか数時間のうちに森をそっくり焼き払うことが可能だった。


火の利用は、来るべきものの前兆だった。」

 

「<兄弟たちはどうなったか?>
ホモ・サピエンスアラビア半島に行きついた時には、ユーラシア大陸の大半にはすでに他の人類が定住していた。では、彼らはどうなったのか?

それについては、二つの相反する説がある。


「交雑説」によると、ホモ・サピエンスと他の人類種は互いに惹かれ合い、交わり、一体化したという。」


「これと対立する、いわゆる「交代説」は、それとは大きく異なる筋書きを提示する。ホモ・サピエンスは他の人類種と相容れず、彼らを忌み嫌い、大量殺戮さえしたかもしれないというのだ。」

 

「ここ数十年は、交代説がこの分野では広く受け容れられてきた。(略)


だが2010年、ネアンデルタール人のゲノムを解析する四年に及ぶ試みの結果が発表され、この論争に終止符が打たれた。遺伝学者たちは、化石から保存状態の良いネアンデルタール人のDNAを十分な量だけ集め、現代人のDNAと全般的に比較できた。


その結果は科学界に大きな衝撃を与えた。
中東とヨーロッパの現代人五特有のDNAのうち、1~4パーセントがネアンデルタール人のDNAだったのだ。(略)


その数か月後、第二の衝撃が走った。デニソワ人(ホモ・デニソワ)の化石化した指から抽出したDNAを解読すると、現代のメラネシア人とオーストラリア先住民に特有のDNAのうち、最大6パーセントが、デニソワ人のDNAであることが立証されたのだ。」


「だが、ネアンデルタール人とデニソワ人をはじめ、他の人類種はサピエンスと一体化しなかったのなら、なぜ消えてしまったのか?まず、ホモ・サピエンスによって絶滅に追い込まれたという可能性がある。(略)


サピエンスの方が、優れた技術と社会的技能のおかげで、狩猟採集が得意だったため、子孫を増やし、拡大していった。才覚で劣るネアンデルタール人は、食べていくのがしだいに難しくなった。人口が徐々に減り、ゆっくりとしに絶えていった。例外として、一人か二人が近隣のサピエンスに加わって生き延びたかもしれない。


別の可能性として、資源をめぐる競争が高じて暴力や大量虐殺につながったことも考えられる。寛容さはサピエンスのトレードマークではない。近代や現代にも、肌の色や方言、あるいは宗教の些細な違いから、サピエンスの一集団が別の集団を根絶しにかかることが繰り返されてきた。


古代のサピエンスがまったく異なる人類種に対して、もっと寛容だったなどということがあるだろうか?」


「過去一万年間に、ホモ・サピエンスは唯一の人類種であることにすっかり慣れてしまったので、私たちはそれ以外の可能性について思いを巡らせるのが難しい。私たちは進化上の兄弟姉妹を欠いているので、自分たちこそが万物の霊長であり、ヒト以外の動物界とは大きく隔てられていると、つい思いがちになる。だからチャールズ・ダーウィンが、ホモ・サピエンスはただの動物の一種にすぎないと述べると、人々は憤慨した。


今日でもなお、そう信じるのを拒む人が大勢いる。ネアンデルタール人が生き延びていたら、私たちは自分が特別な生き物だと、相変わらず思っていただろうか?


ことによると、私たちの祖先がネアンデルタール人を根絶やしにしてしまったのは、まさにこのせいだったのかもしれない。彼らはあまりに見慣れた姿をしていたので無視できず、かといって、あまりにも違っていたので我慢ならなかった、というわけだ。」

 

「サピエンスに責めを負わせるべきかどうかはともかく、彼らが新しい土地に到着するたびに、先住の人々はたちまち滅び去った。

ホモ・ソロエンシスの存在を示す遺物はおよそ五万年前を境に途絶えた。

ホモ・デニソワはその後、間もなく姿を消した。

ネアンデルタール人が絶滅したのは三万年ほど前だ。

最後の小人のような人類がフローレス島から消えたのが、約一万三千年前だった。

彼らは数々のものを残していった__骨や石器、私たちのDNAの中にはいくつかの遺伝子、そして答えのない多くの疑問を。彼らは私たちホモ・サピエンスという、最後の人類種も後に残した。


サピエンスの成功の秘密は何だったのか?私たちはどうやって、これほど多くの、遠くて生態学的に異なる生息環境に、これほど速く移り住むことが出来たのか?


私たちはどうやって他の人類種をすべて忘却の彼方へ追いやったのか?なぜ、強靭で、大きな脳をもち、寒さに強いネアンデルタール人たちでさえ、私たちの猛攻撃を生き延びられなかったのか?激しい議論は今なお尽きないが、最も有力な答えは、その議論を可能にしているものにほかならない。

すなわち、ホモ・サピエンスが世界を征服できたのは、何よりも、その比類なき言語のおかげではなかろうか。」