読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 上  第4章 史上最も危険な種

「第4章 史上最も危険な種 
認知革命以前には、どの人類種ももっぱらアフロ・ユーラシア大陸(訳注 アフリカ大陸とユーラシア大陸を合わせた大陸)で暮らしていた。(略)

地球という惑星は、いくつかの別個の生態系に別れており、そのそれぞれが、特有の動植物群から成っていた。このような豊かな生物相に、ホモ・サピエンスが今まさに終止符を打とうとしていた。」

 

「彼らの最初の成果は、役4万5千年前の、オーストラリア大陸への移住だ。(略)最も妥当な説は以下の通りだ。約4万5千年まえ、インドネシアの島々(アジア大陸やお互いとは狭い海峡によってのみ隔てられている)に住んでいたサピエンスが、初めて海洋社会を発達させた。


彼らは大洋を航海できる舟の作り方や操り方を編み出し、彼方まで出かけて漁や交易、探検を行うようになった。これによって、人類の能力と生活様式に前代未聞の変化がもたらされたことだろう。」

 

「たしかにこれまで、考古学者は4万5千年前にまでさかのぼる筏や櫂、漁村を掘り出したためしがない(発見するのは難しいだろう。海面が上昇し、古代インドネシアの海岸線は100メートルの深さに没してしまったからだ)。」

 


「人類は、約3万5千年前に日本に、約3万年前に台湾に、それぞれ初めて到達している。(略)


人類によるオーストラリア大陸への初の旅は、歴史上屈指の重要な出来事で、少なくともコロンブスによるアメリカへの航海や、アポロ11号による月面着陸に匹敵する。(略)


それに輪をかけて重要なのは、これらの人類の開拓者たちが、この新しい世界でしたことだ。狩猟採集民が初めてオーストラリア大陸に足を踏み入れた瞬間は、ホモ・サピエンスが特定の陸塊で食物連鎖の頂点に立った瞬間であり、それ以降、人類は地球という惑星の歴史上で最も危険な種となった。」

 

「その後数千年のうちに、これらの巨大な生き物は事実上すべて姿を消した。体重が50キログラム以上あるオーストラリア大陸の動物種24種のうち、23種が絶滅したのだ。(略)これはみな、ホモ・サピエンスのせいだったのだろうか?」

 

 

 <告発のとおり有罪>

 

「気候の気まぐれな変動(このような場合のお決まりの容疑者)に責めを負わせて私たちの種の無実の罪を晴らそうとする学者もいる。(略)


第一に、オーストラリア大陸の気候はおよそ4万5千年前に変化したとはいえ、それはあまり著しい変動ではなかった。(略)


過去100万年間には、平均すると10万年ごとに氷河時代があった。(略)


また、約7万年前、最後の氷河期の最初のピークも生き延びた。それならばなぜ、4万5千年前に消えてしまったのか?
もちろん、このころ消えた大型動物がディプロトドンだけだったのなら、ただの偶然の巡りあわせだったかもしれない。


だが、ディプロトドンとともに、オーストラリア大陸の大型動物相の9割以上が姿を消した。この証拠は間接的ではあるものの、これらの動物がみな寒さでばたばたと死んでいるまさにそのとき、サピエンスがたまたまオーストラリア大陸に到着したというのは、想像しがたい。」


「第二に、気泡変動が大規模な絶滅を引き起こすときにはたいてい、陸上動物と同時に海洋生物にも大きな被害が出る。それなのに、4万5千年前に海洋動物相が著しく消失したという証拠はない。」

 

「第三に、このオーストラリアでの原初の大量消失に類する大規模な絶滅が、その後の歳月に何度となく繰り返されている。(略)


たとえば、約4万5千年前の「気候変動」と称されるものを無傷で切り抜けたニュージーランドの大型動物相は、人類が最初に上陸した直後に、壊滅的な打撃を被っている。


ニュージーランドにおける最初のサピエンスの移住者であるマオリ人は、800年ほど前に、この島々にやってきた。その後200年のうちに、地元の大型動物相の大半は、全鳥類種の六割とともに絶滅した。」


オーストラリア大陸の移住者たちが利用できたのは、石器時代の技術だけだ。それなのに、どうやってこのような生態学的大惨事を引き起こすことが出来たのか?


それには、ぴったり噛み合う三つの説明がある。」


「それとは対照的に、オーストラリア大陸の大きな生き物たちは、逃げることを学ぶ暇がなかった。人類は特別危険そうには見えない。」


「第二の説明は、サピエンスはオーストラリア大陸に到達した頃にはすでに、焼き畑農業を会得していた、というものだ。(略)


この説を裏付ける証拠として挙げられるのが、植物の化石記録だ。ユーカリの木は、4万5千年前にはオーストラリア大陸では珍しかった。だが、ホモ・サピエンスの到着とともに、この木は黄金時代を迎えた。ユーカリの木は火事に非常に強いので、他の高木や低木が姿を消すのを尻目に、広く分布するようになった。」

 

「第三の説明は、狩猟と焼き畑農業が絶滅に重大な役割を果たしたことには同意するが、気候の役割を完全には無視できないことに重点を置く。(略)


気候変動と人間による狩猟の組み合わせは、大型動物にとりわけ甚大な被害をもたらした。」

 

<オオナマケモノの最期>

 

「だが、その後には、なおさら大きな生態学的惨事が続いた。(略)


寒さに適応したネアンデルタール人たちでさえ、もっと南のそれほど寒くない地方にとどまった。だがホモ・サピエンスは、雪と氷の土地ではなくアフリカ大陸のサバンナで暮らすのに適応した身体を持っていたにも関わらず、独創的な解決策を編み出した。


サピエンスの狩猟採集民の放浪集団は、前より寒い地方に移り住んだ時、雪の上を歩くために履物や、幾重にも重ね、針を使ってきつく縫い合わせた毛皮や皮革から成る、保温効果の高い衣服の作り方を身につけた。(略)

 

だが彼らはなぜ、わざわざそんなことをしたのだろう?どうしてシベリア流刑を自ら選びとったのか?」

 

「スンギルでの発見が立証しているとおり、マンモス狩猟民は凍てつく北の地方でたんに生き延びただけではない。彼らは大いに繁栄していたのだ。」

 

「彼らはもともと北極圏で大きな獲物の狩に適応していたが、驚くほど多様な気候と生態系に間もなく順応した。シベリア人の子孫は、現在のアメリカ合衆国東部の鬱蒼とした森や、ミシシッピ川デルタ地帯の湿地、メキシコの砂漠、中央アメリカのうだるような密林に住みついた。


アマゾン川流域の川の世界に落ちつく者もいれば、アンデス山脈の渓谷や、アルゼンチンの開けた大草原に根を下ろす者もいた。


そして、これはみな、わずか1000年か2000年の間に起こったのだ!(略)


アメリカ大陸を席巻した人類の電撃戦は、ホモ・サピエンスの比類のない創意工夫と卓越した適応性の証だ。どこであっても事実上同じ遺伝子を使いながら、これほど短い期間に、これほど多種多様な根本的に異なる生息環境に進出した動物はかつてなかった。」

 

「動物の遺物を探し、研究する古代生物学者や動物考古学者は、古代のラクダの化石化した骨やオオナマケモノの石化した糞便を探して、何十年にもわたって南北アメリカの平地や山々をくまなく調べて来た。


お目当てのものを見つけると、そうした宝は注意深く梱包されて研究室に送られ、そこで骨や糞石(化石化した糞を意味する専門用語)が一つ一つ入念に調べられ、年代が推定される。


そうした分析からは、繰り返し同一の結果が得られる。最も新しい糞石も、最も新しいラクダの骨も、人間がアメリカ大陸に殺到した時代、すなわちおよそ紀元前一万二千~九千年にさかのぼるのだ。(略)


私たちが犯人なのだ。この事実は避けて通れない。仮に気候変動の手助けがあったとしても、人間が関与したことは決定的なのだ。」


〇このハラリ氏は、まるで、大工さんの棟梁のように、また、名探偵ポアロのように、学者たちの様々な研究を組み合わせて、一つの結論を導き出しているように見えます。

そして、またまた「真理は強制する」です。
「私たちが犯人なのだ。この事実は避けて通れない」

この結論に行きついたなら、その結論を避けようとするのは、人間として信じられないほど愚かでまともにつき合えないほど幼稚で軽蔑すべき人、ということになります。

あの刑事コロンボの犯人は、事実を突きつけられたら、潔く認めます。
どれほどひどい犯罪を犯した人でも、事実は認めます。

安倍総理に爪のあかを煎じて飲ませたい。

 

 <ノアの方舟

 

「最大の被害者は毛皮で覆われた大型の動物たちだった。認知革命の頃の地球には、体重が50キログラムを超える大型の陸上哺乳動物がおよそ200属生息していた。それが、農業革命の頃には、100属ほどしか残っていなかった。

ホモ・サピエンスは、車輪や書記、鉄器を発明するはるか以前に、地球の大型動物のおよそ半数を絶滅に追い込んだのだ。」

 

「もっと多くの人が、絶滅の第一波と第二波について知っていたら、自分たちが起こしている第三派についてこれほど無関心ではいないかもしれない。私たちがすでにどれほど多くの種を根絶してしまったかを知っていたら、今なお生き延びている種を守ろうという動機が強まるかもしれない。


これは大型の海洋動物については、とくに重要だ。(略)もしこのままいけば、クジラやサメ、マグロ、イルカはディプロトドンやオオナマケモノ、マンモスと同じ運命をたどって姿を消す可能性が高い。


世界の大型生物のうち、人類の殺到という大洪水を唯一生き延びるのは、人類そのものと、ノアの方舟を漕ぐ奴隷の役割を果たす家畜だけということになるだろう。」