読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ホモ・デウス (上) (第3章 人間の輝き)

「 夢と虚構が支配する世界

 

サピエンスが世界を支配しているのは、彼らだけが共同主観的な意味のウェブ―― ただ彼らに共通の想像上の中にだけ存在する法律やさまざまな力、もの、場所のウェブ —— を織り成すことができるからだ。人間だけがこのウェブのおかげで、十字軍や社会主義革命や人権運動を組織することができる。(略)

 

 

その結果、猫やその他の動物が客観的な領域に閉じ込められ、もっぱら現実を描写するためにコミュニケーションシステムを使っているのに対して、サピエンスは言語を使って完全に新しい現実を生み出す。(略)

 

 

他の動物たちが人間に対抗できないのは、彼らには魂も心もないからではなく、必要な想像力が欠けているからだ。ライオンは走ったり飛び跳ねたり、鉤爪で引っかいたり、噛みついたりできる。だが、銀行口座を開いたり、訴訟を起こしたりはできない。そして、二一世紀の世の中では、訴訟の起こし方を知っている銀行家のほうが、サバンナで最も獰猛なライオンよりもはるかに強力なのだ。

 

 

 

共同主観的なものを生み出すこの能力は、人間と動物を分けるだけではなく、人文科学と生命科学も隔てている。歴史学者が神や国家といった共同主観的なものの発展を理解しようとするのに対して、生物学者はそのようなものの存在はほとんど認めない。(略)

 

 

 

一方、人文科学は共同主観的なものの決定的な重要性を強調する。そうしたものはホルモンやニューロンに還元することはできない。歴史的に考えるというのは、私たちの想像上の物語の中身には真の力があると認めることだ。もちろん、歴史学者は気候変動や遺伝子の変異といった客観的要因を無視するわけではないが、人々が考え出して信じる物語をはるかに重視するのだ。

 

 

 

北朝鮮と韓国があれほど異なるのは、ピョンヤンの人がソウルの人とは違う遺伝子を持っているからでもなければ、北の方が寒くて山が多いからでもない。北朝鮮が、非常に異なる虚構に支配されているからだ。(略)

 

 

 

したがって、もし自分たちの将来を知りたければ、ゲノムを解読したり、計算を行なったりするだけでは、とても十分とは言えない。私たちには、この世に意味を与えている虚構を読み解くことも、絶対に必要なのだ。」