読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

国体論 ー菊と星条旗—

「(略)

「▼「お言葉」の文脈—天皇の「闘争」

では、今上天皇にかような切迫した危機感をもたらした文脈は何であったのであろうか。

狭くは、憲法改正へと突き進む安倍政権に対する牽制を指摘できよう。「今上天皇生前退位(攘位)する意思を固めたらしい」とのニュースがはじめて流れたのは、二〇一六年七月一三日である。それは七月一〇日の参議院選挙で改憲勢力が衆参両院合わせて三分の二以上の議席を獲得して、憲法改正の国会発議が可能になった直後というタイミングであった。(略)

 

そもそも、「お言葉」自体が「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」との名称を付され、象徴天皇による「象徴天皇制論」の体裁をとっていた。「お言葉」に闘争を読み込むのならば、「象徴の務め」を語る言葉は、その背後で展開されている闘争を浮かび上がらせる「象形文字」としてとらえられなければならない。

 

 

言い換えれば、今上天皇が「象徴の務め」を語ることによって、何が婉曲に語られたのかを掴まなければならない。(略)

 

 

 

▼日本社会の「破産」

想い起せば、戦後民主主義の危機は、二〇一一年三月一一日の東日本大震災福島第一原発の事故、そしてその後の第二次安倍政権の成立とその施政によって、爆発的に表面化してきた。(略)

 

 

だが、日本社会の大勢はこの苦しい現実に立ち向かうよりも、むしろそこに開き直ることを選んだのであり、それにふさわしい政治指導者が安倍晋三であった。彼に象徴される政治権力のあり方は、この矛盾を真っ当なやり方で解きほぐそうとするどころか、矛盾によって浸蝕された体制をあらゆる手段を用いて死守するものである。

 

 

 

「永続敗戦レジーム」によって規定された「戦後」は、基礎を喪って、もはや存続の手立てがないにもかかわらず、このレジームを惰性的に維持しようとする社会的圧力が、清算しようとする社会的圧力を上回っているために、宙に浮いたまま事実上維持されてしまっている。

 

 

この状態の行き着く先は、何らかの意味での「破産」である。

否すでに、原発事故の被災地は「破産」を経験しているし、長期政権化した安倍政権の下での常軌を逸した国会軽視や虚偽答弁、三権分立の破壊等によって、議会制民主主義もまた「破産」しているとも見なし得る。(略)」