読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

国体論 ー菊と星条旗—

「第六章 「理想の時代」とその蹉跌

      (戦後レジーム:形成期③)

1 焼け跡・闇市から「戦後の国体」の確立へ

▼理想の時代

前章で見てきた「国体を護持した敗戦」と占領、講和条約の発効、日米安保体制の成立にまつわる政治神学的過程の進行と並行して、この期間は、著しい社会混乱と同時に、あの軍国主義と敗戦を経てどんな国として再出発するのかという問いが、かつてない熱気を帯びて問われた時代であった。(略)

 

 

大まかに言って、「戦後の国体」に直接関わる論争は、次のように展開してきた。

その嚆矢は、一九五一年に調印されたサンフランシスコ講和条約ならびに日米安保条約をめぐる講和論争に求められる。論争は、「全面講和か片面講和か」というかたちで闘われた。(略)

 

 

 

安保闘争は、ある面では全共闘運動に引き継がれる。そして、東大闘争やあさま山荘事件といった激しいスペクタクルが展開され、これらの異議申し立て運動が粉砕ないし自壊した時、多くの人々が「時代の終焉」を感じ取った。

 

 

▼政治論争 ― ふたつの原型

これらの論争・政治闘争における争点の基軸のひとつは、「反米」であった。それは、「戦後の国体」がアメリカを頂点とするものとして構築されたものであった以上、反対者たちがそれを掲げたのは見やすい道理である。(略)

 

 

 

この論争には、戦後の政治論争の原型が現れている。反体制側は対米従属一辺倒でない日本の国際的立ち位置を模索・追及すべきだと主張し、権力側は「机上の空論でお話にならない」と門前払いするというパターンであり、このパターンは現在に至るまで引き続いている。(略)

 

 

 

片面講和と日米安保条約への講和とは、③の独立国として筋の通った選択肢を捨て、アメリカの庇護の下での復興・発展という実を取ることを意味した。(略)

 

 

また、講和論争においてすでに現れたもうひとつのパターンがあった。それは、戦争の脅威が常に「米ソの対立に日本が巻き込まれる」というかたちで提起されることである。(略)

このパターンは「アメリカとソ連」が今日、「アメリカと北朝鮮」あるいは「アメリカとイスラム原理主義テロ組織」といったかたちに変更されて維持されている。

 

 

以上のふたつのパターンは、六〇年安保においてすぐに反復されることとなる。そして講和論争と安保闘争の間に挟まれているのが、五〇年代の改憲論争である。(略)

 

 

 

しかし、一九五二年から五五年にかけての政局において、改憲再軍備の問題は、保守勢力諸党の議題に度々上り、鳩山が政権の座に就いたにもかかわらず、ついに実現することはなかった。その端的な理由は、改憲再軍備への意欲を保守勢力が露わにすればするほど、再軍備に強硬に反対する左派社会党が得票を伸ばしたからである。(略)

 

 

言い換えれば、有権者は一貫して、改憲を党是とする政党を支持しながら改憲に反対してきた、というねじれがここにはある。(略)」