読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

国体論 ー菊と星条旗—

「2 異様さを増す対米従属

▼ 収奪攻勢としてのグローバリゼーション

(略)

これらすべては、「グローバリゼーションへの対応・推進」の名の下に、アメリカに本拠地を持つ場合の多いグローバル企業が日本の企業へ参入する道筋をつくるものだった。(略)

つまり、国民生活の安定や安全に寄与するための規制や制度すべてが、論理上、この「障壁」にカテゴライズされ得るのである。この延長線上で今日懸念されているのは、たとえば、日本の国民皆保険制度に対する攻撃である。(略)

 

 

 

しかし、日本の場合、際立っているのは、こうした動向に対する批判の声があまりにも小さいことである。たとえば、大手新聞メディアにしても、TPPをアメリカあるいはグローバル企業による新たな収奪攻勢としてとらえるという論調は、ほとんど見られなかった。(略)

 

 

そしてその挙句に、アーミテージ=ナイ・レポートのごとき、公然たる内政干渉が大した違和感もなく通用する(政権の政策と一体化する)という状況が、二〇〇〇年代以降通常のものとなった。

 

 

 

▼ 対米従属の逆説的昂進

ひとことで言えば、「異様なる隷属」である。再びアリギを参照するならば、こうした状況に至る前には、次のような段階があった。

 

 

親米的な自民党政権のもとでさえも、日本はアメリカの命令に従う理由をみつけるのが、ますます困難になっていた。(略)

 

 

だが、アリギも見通せなかった驚くべきことは、紆余曲折を経ながらも、結局のところ、自民党を中核とする日本の政治権力は、「アメリカの命令に従う理由をみつける」ことに狂奔し、それに成功してきた、ということだ。(略)

 

 

 

そして、脱対米従属を志向した鳩山民主党政権の成立は、その過程における例外的な事例であったが、結果としてそれは、対米従属をこれまでになく露骨に強化する激しい反動を呼び起こすこととなった。

 

 

 

▼ 軍事的従属

なぜこうした異様な事態が生じるのか。頻繁に口にされる標準的な答えは、軍事的従属のためというものである。(略)

 

 

 

イラクのごとき重要な産油国が石油取引の通貨をドルから切り替えることは、この制度に対する挑戦を意味し、ドルの基軸通貨としての地位を脅かす。アメリカの官民の負債が増え続けるなかで、米ドルの価値が崩壊するのではないか、という懸念はすでに長い間ささやかれてきた。この憂いを絶つために、アメリカはイラク戦争を決行してフセイン政権を打倒した、と見られているわけである。

 

 

 

この見方が正しいとすれば、アメリカの巨大な軍事力は、常に財政状況を圧迫する火種であると同時に、アメリカにヘゲモニー国家としての地位を保たせている究極の要因である。」