読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

国体論 ー菊と星条旗—

自民党政権の本質が、「戦後の国体」としての永続敗戦レジームの手段を選ばない死守であることに照らせば、戦後日本に経済的繁栄をかつてもたらした要因としての戦争に、同レジームが再び依存しようとしたとしても、何ら驚くべきことではない。実際、そのような事態の発生に備えて、日米の軍事的協働は年々着々と深められてきたのである。(略)

 

 

戦争そのものによる需要と相俟って、アベノミクスなるインチキ膏薬によって危うさを増した日本資本主義を、それは救いうる。「憲法九条と自衛隊」の問題も吹き飛ぶ。現に戦争をしているという現実の中では、紙に書かれた「戦争放棄」は意味を失う。(略)

 

 

 

緊張が高まったなかで、「北朝鮮が日本にとってリスクであるような強硬路線を突っ走るのは、日本の国土を中軸とする極東アジアの米軍のプレゼンス、つまり北朝鮮から見ればアメリカからの軍事的恫喝が存在するからである」という至極当たり前の事実に思い至らない人々(=永続敗戦レジームのなかで思考停止した大部分の日本人)が、いざ有事が発生したという時に冷静な思慮分別など持てるはずがない。(略)

 

 

しかし、そもそもそのような危機がもたらされた、その大半の要因は、朝鮮戦争が休戦状態のまま放置され、そのことを根拠のひとつとしてアメリカが日本に巨大な軍隊を駐留させ続け、そしてそのために北朝鮮が自国の存在を目指して核ミサイル開発に走った、という事実にある。(略)

 

 

 

朝鮮戦争の平和的終結に向けて日本外交は取り組むべきである」という声が政界の中心部からこの期に及んでも出てこないという光景は、レジームの崩壊期における頽廃の極みを映し出していると同時に、パックス・アメリカーナという八紘一宇に対する日本人の信仰を映し出すものでもある。(略)

 

アメリカの衰退と中国の大国化によって東アジアの情勢が総体的に不安定化する可能性は高く、米中の狭間に位置する日本は、難しい対処を迫られる。その際に、この信仰がきわめて有害な作用を及ぼすことは、今次の危機に対する日本政府と国民の振舞によって証明された。」