読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

フランスはどう少子化を克服したか

「夫も息子たちの親なのだから世話はできて当たり前だし、まして我が家は共稼ぎで家事・育児も分担制。」


〇あの「日本はなぜ敗れるのか」の中で小松氏が、「将校はみな、社会人としては零だった」と書いていたのが強烈でした。「社会人として」だったのですが、私の中では、なぜか「生活無能力者」として記憶されていました。

この場合の「生活」とは、衣食住の能力です。
自分の大雑把な読書力を反省すべきなのですが、でも、この生活力と社会人としての能力は、本当は関連していなければならないと思います。

しっかり衣食住の実際について知っていて初めて、人間にとってどういう社会が良い社会かを考えることができる。それを考えられる人が、良い社会人になれる。

そうじゃなければ、「ゲーム的な仕事でゲーム的な利潤を生む」だけの金持ちの社会になり、人間が幸福になれる社会は作れないと思います。

そして、子育てという本来人間にとって一番大事な事に、男が全くタッチしない社会は、やはり、「母性性社会」と言われてもしょうがない社会だと思います。


「おまけにフランスはカップル社会で、友人との食事会やレジャーに行くのもカップル単位。男も女もお互いこそが「最優先するべき相手」と認めた上でお付き合いします。」

〇多分これも、キリスト教の価値観からくるのではないか、と思うのですが、
「愛がなければすべては虚しい」という聖書の言葉を暮らしに実現させようとすれば、こうなるのが、当然とも言えます。


「こちらではこの「男を父親にする」作業が、とても意識的に行われています。その代表が、出産後に2週間取得できる「男の産休」、短期集中合宿よろしく、パパ・トレーニングを行う機関です。」


〇 この「意識的に」という言葉が日本とは違うと思いました。日本では「自然に」そうならなければ定着しない。でも、「自然」は低きに流れるのが普通だと思います。


「赤ちゃんの誕生後、サラリーマンの父親には3日間の出産有給休暇があります。原型となる法律は1946年に制定された、由緒正しき有給休暇です。休暇中の給与はもちろん、雇い主が負担します。」


「2002年の施行からすばやく社会に浸透し、2012年には新生児の父親にの約7割が取得したといいます。」



「「人生で一番大切な時間だった」と振り返る父親もいます。」



「ある日、夜間授乳で疲労の限界だった私の堪忍袋の緒が切れたのです。きっかけは夫の「何を手伝えばいいの?」の一言でした。

ここは二人の大人が住む家で、この子は二人の子なのに、「手伝う」という考え方はおかしい! 自分で考えて動いてよ!」


「父親産休を取らなかった人たちにも話を聞きたいと探してみましたが、これまで、一人も話してくれる人はいませんでした。(略)


「彼は分娩にも立ち会わなかったし、父親の自覚が薄い人だから。自分の子どもと一緒にいられる休暇があるのに、それを取らないってことで、いろいろ分るでしょう?」」


「すると、職種・業種問わず全員から、同じこと答えが返って来たのです。
「そりゃ、人生で一番大切なことだから!」(略)


僕自身の時にも、同僚の対応は同じような感じだった。妻から陣痛開始の電話があったのは、僕が発表をする大切な会議を控えた朝だったんだ。つい、「区切りのいいところまで仕事をしていこう」とデスクに座りなおしたら、課長に怒鳴られた。「何やってんだ、子どもの出産より大事なものなんてないだろう!あとはやっておくから早く帰れ!」とね」


〇私の場合は、里帰り出産ということもあって、夫が病院に来たのは、長男の時が次の日、次男が3~4日後、第3子の時は、病院には来ませんでした。


「「子育ての当時者でない人たちには、今の子持ちは優遇されてていいねという気持ちは当然あると僕の職場でも感じます。でも口や態度に出すことはない。それは大人として恥ずかしい事なんです。子供は社会に必要な存在ですから」」

〇「恥ずかしい」の内容が違います。私たちの社会は、恥の文化と言われているけれど、「人並み」「世間体」から外れる時、恥ずかしいとなります。

人目を気にして、それを基準に行動するのは子供だと思います。
大人としてのふるまいが出来ないことが恥ずかしいというのは、大人だと思います。


「70年代後半に2を割り、1993年に1・66まで落ち込んでしまった過去があります。働きながら子供を生み、育てることの難しさは、今に始まったことではないのです。両立が難しくなった時、女性は子供を持つことより、キャリアの継続を選ぶという傾向も、この数字が明らかにしました。」



「今日女性の就業率が高い国は、高い出生率を示している。親たちが子供の教育にしっかり携われるような方策を提案し、女性を職に留まらせておくことは、出生率を高い数字で維持し、長期的には世代の更新に貢献し、ひいては経済成長、社会制度の安定にも繋がるのである。(フランス社会保険、効率・質の向上計画 2012年より、著者訳)」


「施行された時の家族・児童・障害者大臣は、後にフランス大統領選にも出馬する女性政治家セゴレーヌ・ロワイヤルでした。」


「妊婦検診や出産に関する医療技術はもちろんですが、それと同じくらい、父母の心理面をケアする技術も必要なんです。特に父親のケアの重要性は、年々上がっているように感じますね。」



〇例えば…私の世代が「必死の形相で」子育てをして、不安で怯えた人間に育った子供が今、子育てを始めています。今は以前にも増して、長時間労働、しかも身分の不安定さの中、父親自身が自分の身一つさえ守れない状況の中での子育てです。

また、「日本はなぜ敗れるのか」を引き合いに出しますが、その中で山本氏は、

「(小松)氏は、ある状態に陥った人間は、その考え方も生き方も行動の仕方も全く違ってしまう事、そしてそれは人間が生物である限り当然なことであり、従って「人道的」といえることがあるなら、それは、人間をそういう状態に陥れないことであっても、そういう状態に陥った人間を非難罵倒することではない、ということを自明とされていたからである。」

と言ってます。

人間がそのような状態になると、「その考え方も生き方も行動の仕方も全く違ってしまう」のは、普通に想像出来ます。

従って「人道的」といえることがあるなら、それは、人間をそういう状態に陥れないことであっても、そういう状態に陥った人間を非難罵倒することではない

今も昔と少しも変わらず、これが出来ないのが私たち日本人なんでしょうか?
若い子育て世代を苦しめ続けていることと、悲惨な子供の虐待が多い事には、関連があるように感じられてなりません。

そして、そんな政治しか出来ない政治家ばかりなのは、育児に全くタッチしない男たちが多すぎるからだと思います。