読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ホモ・デウス (上) (第3章 人間の輝き)

「第3章 人間の輝き

 

人間がこの世界でいちばん強力な種であることは疑いもない。ホモ・サピエンスは、自分がひときわ高い道徳的地位を享受し、人間の命はブタやゾウやオオカミの命よりもはるかに価値があるとも考えたがる。だが、果たしてそれが正しいかは、それほど明白ではない。(略)

 

 

 

アメリカはアフガニスタンよりもはるかに強力だ。それならば、アメリカ人の命はアフガニスタン人の命よりも本質的な価値が大きいことになるのだろうか?

実際問題として、アメリカ人の命のほうが高く評価されている。(略)アメリカ国民が殺害されたら、アフガニスタン国民が殺害されたときよりもはるかに激しい国際的な抗議が湧き起るだろう。とはいおえ、これは一般に、地政学的な力の均衡の不当な結果にすぎないと受け止められている。(略)

 

 

 

伝統的な一神教なら、サピエンスだけが不滅の魂を持っていると答える。肉体は衰え、やがて朽ちるが、魂は救済あるいは永遠の断罪に向かって旅を続け、楽園で永久に続く喜びを経験するか、あるいは地獄で未来永劫、悲惨な状態にとどまる。ブタやその他の動物は魂を持たないので、この壮大なドラマには参加しない。

 

 

彼らはほんの数年生きるだけで、それから死んで無に帰する。したがって私たちは儚いブタよりも人間の不滅の魂にはるかに多く気を遣うべきなのだ。

これは幼稚園で語られるおとぎ話ではなく、ニ一世紀初頭の今も、何十億という人間と動物の生活を形作り続けている、はなはだ強力な神話だ。(略)

 

 

 

ところが、最新の科学的発見はみな、この一神教の神話をきっぱりと否定している。たしかに、研究室での実験で、この神話の一部が正しいことが裏付けられてはいる。まさに一神教信者の言う通り、動物たちには魂はない。(略)

 

 

残念ながら、同様の実験によって、一神教神話の第二の、そしてずっと重要な部分、すなわち、人間には現に魂があるという部分も切り崩されている。科学者たちはホモ・サピエンスに何万という奇怪な実験を行ない、私たちの心臓や脳を隅から隅まで調べて来た。だが、これまでのところ、不思議な輝きは見つかっていない。ブタとは違ってサピエンスには魂があるという科学的証拠は皆無なのだ。(略)

 

 

ところが生命科学者たちが魂の存在を疑っているのは、証拠がないからだけではなく、魂という考えそのものが、進化の最も根本的な原理に反するからでもある。

進化論が敬虔な一神教信者の間にとどまる所を知らない憎しみを引き起こすのは、この矛盾のせいだ。」