読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

精神の生活 上

「<考えないこと>と悪との間には何か関係がありそうだということは、我々の
抱えている中心問題とのからみで考えるとどういうことになるのか?

結論としては、ソクラテス的なエロス― 智慧・美・正義への愛― によってかきたてられている人だけが思考できるのであり、信頼できるのだということになる。

いいかえると、これはプラトンの言う「高貴なる本性の持ち主」であり、そのごく少数の人だけが「すすんで悪をなす」ことはないと言えるのである。」

「というのも、この自我は二者性においてのみ存在しているからである。(略)

(ちなみに、この根源的な二者性があるのだから、アイデンティティーを求める最近の研究が不毛であるのもわかるというものである。近代におけるアイデンティティーの危機が解決できるとすれば、手段としてはぜったいに一人にならずに絶対に考えないようにするしかあるまい。)」


「このような良心は、我々の内なる神の声や自然の光と違って、積極的な処方箋を
出したりしない。(ソクラテスのダイモン、神の声も何をしてはいけないのかを教えるだけである。)

シェイクスピアの言葉でいえば、「それは人間を障害だらけにしてしまう」。」


「人がそれを恐がっているのは、もし帰宅するならそのときにだけ待ち受けている
証人が姿を現すのを予期しているからである。(略)

なぜなら、我々が「思考」と呼んでいる無言の一人での対話をけっして始めず、家に帰らず、物事を吟味しなければよいのである。これは頭がよいとか悪いとかいう問題でなく、さりとて善悪の問題でもない。」


「(我々が自分の発言や行動を吟味する)無言の会話を知らない人は、自分自身と
矛盾しても平気なのであり、自分の発言や行動を説明することができないし、そうするつもりもない、ということになる。

犯罪を犯したとしてもすぐに忘れられるだろうと決め込んで平気だ、ということにもなる。悪人は「後悔の念」で一杯になっているということはない。」


「思考する自我が経ていく思考の流れの種類がどうであれ、我々全員の自我が注意
しなければならないのは、<一者の中の二者>が友人となって調和よく生きていく
道を塞がないようにすることである。」